ヒロの婚活心理学
交際経験ゼロのアラフォー女性・あかりが「結婚したい」と思えるまで
40歳を過ぎても“交際経験ゼロ”という女性は、今では決して珍しくありません。
でも、それは単に「出会いがなかった」という話ではないのです。恋を知らないのではなく、むしろ誠実すぎて、誰かを好きになることを慎重に避けてきた。そんな女性たちがいます。
背景には、「親密さへの恐れ」や「愛着不安」、そして日本社会特有の“同調圧力”があります。波風を立てずに生きてきた人ほど、心の中で“恋する自由”を封印してしまう。
ここでは、そんな無意識の壁を乗り越え、「誰かと生きてみたい」と心から思えるようになった、ひとりの女性・あかりの物語をたどります。
これは、彼女自身の“再生”の記録であり、同時に、現代アラフォー世代の心に共通する“愛の準備”の物語でもあります。
01|「誰かと生きてみたい」──アラフォー婚のリアル
結婚を意識するきっかけは、人によって違います。
けれど、40代という年齢は、人生の「静かな臨界点」を迎える時期。
親の老い、体調の変化、休日の沈黙。
ふとした瞬間に、孤独が輪郭を持って迫ってくる。
あかり(仮名・41歳・IT系事務職)も、そんな夜を経験していました。
母の病気をきっかけに「結婚」を現実的に考え始めたのです。
母が回復したあとも、胸の中に空洞が残った。
「このまま一人で生きていくのだろうか?」――その小さな不安が、彼女を結婚相談所へと導きました。
婚活の難しさは、“出会いがない”ことではありません。
「人と関わる心の準備ができていない」ことこそが、最大の壁。
結婚とは、誰かに出会う前に、自分自身と再会すること。
アラフォー婚とは、実は“成熟のレッスン”なのです。
02|親密さが怖い──「癒着」という名のやさしさ
40歳を過ぎても交際経験がない人の多くは、単に“チャンスがなかった”わけではありません。
心の奥に、他者を恐れる気持ちが根を張っているのです。
心理学的には、これは親密さへの恐怖(fear of intimacy)や感情麻痺(emotional numbing)と呼ばれます。
感情を抑えて生きてきた人ほど、“感じる力”そのものが弱くなってしまうのです。
その結果、「愛されたいのに距離を取ってしまう」という逆説的な行動が生まれます。
あかりは一人っ子で、女子校・女子大を経て社会へ出ました。
恋愛経験はゼロ。
明るく優しいけれど、心の距離を詰められるのが苦手。
母とは仲良しですが、その“仲の良さ”の裏には、見えない支配の糸が絡んでいました。
厳しい父と、それを補う母。彼女は二人を安心させるために“正しい娘”を演じ続けてきたのです。
「反抗期はなかったんです。反発すること自体が、罪みたいで。」
心理学で言う過剰適応です。
自分の感情より、他人の期待を優先してしまう。そ
んな人は、他者との“ちょうどいい距離感”が分からなくなりがちです。
恋愛が怖いのは、“自由を失うことへの恐れ”。
それは、支配されることを“愛される”と錯覚してきた心の名残でもある。
03|七五三の振袖──「言い足りていない」人生の始まり
この章で語られるエピソードは、単なる思い出ではありません。
幼いころの“身体記憶”であり、従順さの刷り込みの象徴です。
あかりが語ったのは、七五三の記憶。
長い振袖を無理やり着せられ、歩くたびに裾を踏んで息苦しかった。
それでも、泣くことも「嫌だ」と言うこともできなかった。
「親は良かれと思ってしてくれた。だから、ノーを言ってはいけないと思ってたんです。」
この“沈黙の記憶”が、今も彼女の生き方を支配しています。
頼まれると断れない。
恋愛以前に「自分の希望を言葉にすること」自体が難しい。
「誰かに好かれるのが、怖いんです。自分がいなくなる気がして。」
愛されることと支配されることが混ざり合うと、愛は“優しい監禁”に変わる。
だからこそ、彼女は“安全な孤独”を選び続けてきました。
04|「父の枠」から抜け出す
あかりは今も実家暮らし。
結婚を考えるとき、まず浮かぶのは「父が何と言うか」。
母は「結婚するまで家にいなさい」と言い、あかりは反論できませんでした。
でも、かつて一度だけ“自立”を試みたことがあります。
転職で通勤距離が伸びたとき、「一人暮らしをしたい」と申し出たのです。
けれど父に却下され、母も同調。
あかりは「仕方ない」と飲み込みました。
「あのとき、自分の気持ちを言い切れなかった。それが今でも悔しい。」
そこには、“親の承認がなければ動けない”という無意識の依存がありました。
愛されたい気持ちと、自分を生きたい気持ち。
そのせめぎ合いの中で、彼女はずっと立ち止まっていたのです。
「あなたは本当は自責が強い。自分に厳しいから、自己主張=わがままになっている。今も、その自分を許していないから親も許していない。自分を許すとは、自分を愛するということなんですよ。」
この言葉が、あかりの心に深く響いた。
長年、誰かを許せなかったのではなく、“自分を許せなかった”のだ。
彼女が少しずつ、自分を責めることをやめていくこと。
それが、父の枠から抜け出す第一歩になった。
05|“対等さ”の練習──「提案する勇気」から始めよう
カウンセリングで最初に取り組んだのは、「親との対等さ」を取り戻すこと。
「親が納得する反論を、考えてみましょう。」
そう伝えると、あかりは涙を流しました。
「自分の理想が分からない」と。
それでも少しずつ、“提案する勇気”を練習していきました。
母に「結婚に備えて家事の分担を増やしたい」と話すと、母は意外にも受け入れた。
職場でも、希望部署への異動を提案し、上司は「組織の成長にもなる」と賛同。
「縦じゃなくて、横で話すって、こんなに楽なんですね。」
アドラーは言います。
「ひとつでも縦の関係があると、すべての関係が上下になる」と。
彼の理論では、人間関係の根本は“共同体感覚”にあります。
つまり、相手を支配するのでも、依存するのでもなく、互いを対等な仲間として尊重する感覚です。
あかりにとって、それは“上から目線でも下から目線でもない関係”を初めて体感することでもありました。
アドラー心理学では、勇気とは「困難を引き受ける力」とされます。
提案する勇気とは、自分の意見を差し出し、相手の意見も尊重する姿勢。
そこには、相手を敵視せず、味方とみなす“横の関係”の哲学が流れています。
06|“誰かと生きてみたい”という願いの正体
あなたも、ふとした夜に「このままずっと一人なのだろうか」と感じたことはありませんか。
仕事も友人関係もそれなりに満たされているのに、心の奥では誰かと温もりを分け合いたい――そう思う瞬間が、きっとあるはずです。
親との関係が少しずつ変わると、あかりの中でも「誰かと生きてみたい」という気持ちが、ようやく自分の言葉になっていきました。
「これまで、親のための人生だったのかもしれない。次は、自分の人生を誰かと分かち合いたい。」
この“分かち合いたい”という感覚こそ、心理的成熟のサインです。
恋愛や結婚は、孤独を埋める行為ではなく、自立した二人が、安心して依存し合える関係を築くこと。
婚活とは、相手を探す活動ではなく、“自分の意志で関係を選び直す”練習。
あかりの変化は、受け身から主体への転換でした。
結婚とは、誰かに頼ることではなく、“自分の自由を、誰かと共有すること”。
07|“もう遅い”なんて、誰が決めたの?
40代で恋をしてもいい。
50代で初めて「愛されたい」と思ってもいい。
人生の成熟とは、恋愛の終わりではなく、“心の再起動”です。
多くのアラフォー女性が口にするのは、「今さら恥ずかしい」「若い子には敵わない」という言葉。
でも本当の魅力とは、年齢ではなく、“自分をどう扱うか”にあります。
あかりが変わったのは、外見でも条件でもなく、“自分を許す”ことを覚えたから。
過去の沈黙に意味を与え、自分の声を取り戻したとき、彼女はもう“誰かに選ばれる側”ではなく、“誰かを選べる人”になっていました。
結婚は、誰かに救われることではありません。
自分の人生を、自分の足で歩きながら、誰かと歩幅を合わせること。
アラフォー婚とは、諦めではなく、ようやく“愛の本番”が始まる地点です。
恋は若さの特権ではない。成熟した心にこそ、本当の親密さは宿る。
もう、“遅い”なんて言葉に縛られないでください。
一人は快適だが、一人は寂しい。
それはどんなに時代が進んでも、人間に共通の“宿命”なのかもしれません。
あなたの人生にも、あかりのような再出発は必ず訪れます。
愛とは、もう一度、自分を信じることから始まるのです。
(婚活メンター・ひろ)
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第2回|自己肯定感を取り戻す小さな一歩──つい落ち込んでしまう癖が強い婚活あるある
シリーズを通して読むことで、蛙化の理解がより立体的に深まります。
- 第1回|蛙化とは何か?基本の理解
- 第2回|承認欲求と蛙化現象
- 第3回|婚活と蛙化現象──「良い人なのに好きになれない」の正体
- 第4回|蛙化克服のヒント
- 第5回|蛙化現象の男女差──それぞれの心に潜むトラップ
- 第6回|SNS時代の蛙化現象──「映える恋」と婚活のリアルな恋の落差
- 第7回|理想が壊れるとき、愛は本物になる──蛙化を超える成熟
- 第8回|蛙化と恋の幻想──記号が作る恋と幻滅の構造
- 第9回|蛙化の先にある”トゥルー・ラブ”二人でしかつくれない現実
第1回|「ありのままを愛される奇蹟」──成婚者の声に見る蛙化克服の物語
第2回|「父との葛藤を超えて」──成婚者の声に見る蛙化克服の物語
第3回|「ひとりで十分幸せ」からの逆転劇──かなえさんが婚活で見つけた“ふたりの幸せ”