ヒロの婚活心理学
【第1話】若者は何を恐れているのか?──「結婚はコスパが悪い」の心理
『結婚はコスパが悪い』という言葉の裏には、愛に冷めた人ではなく、愛に臆病な人がいるのではないか?──婚活心理学の視点から、その“臆病さ”の正体を読み解く。損得では測れない愛の意味、そして「割に合わない」ことが人生を豊かにする理由とは?
00|なぜ“コスパ悪い”と言われるのか?
結婚が「コスパ悪い」とされる主な理由は、
①金銭コストの増加、②自由の制約、③リスク・不確実性、④自己投資や時間の機会損失、⑤心理的・感情的負担の増大
──などが挙げられる。
だが、これらはいずれも「結婚=損」という単純な構図ではない。むしろそれぞれの理由の裏に、人が抱える不安や期待、愛への誤解が潜んでいる。
以下の章では、その“内なる心理”を解きほぐしていく。
01|“効率”の言葉で語られる愛の時代
「結婚はコスパが悪い」。
そう言う人の多くは、実は愛を軽蔑しているのではない。
むしろ、愛を真剣に考えるからこそ怖いのだ。
婚活の現場では、「結婚したいけど踏み出せない」「誰かと生きることが現実的に感じられない」という声をよく聞く。
経済効率や合理性を重んじる社会では、「損をしない生き方」が正義のように語られる。
時間もお金も人間関係も、いかに無駄を省くか。そんな時代の通貨が「コスパ」だ。
したがって、愛や結婚のように結果の見えない営みは、常に“割に合わない”と判定されてしまう。
けれど──その「割に合わない」と感じる違和感こそが、人が誰かを求める根拠でもある。
なぜなら、人は太古の昔から、本能的に“非効率な幸福”を欲しているからだ。
愛とは、効率ではなく余白に宿る。
だからこそ、計算では辿り着けない幸せがある。
02|「コスパ思考」は、恐れの言語である
婚活で「コスパ悪い」とつぶやく人は、実は冷静でも合理的でもない。
そこには、人を好きになることへの恐れがある。
理性的なふりをしても、心の奥では「また傷つくのでは」と怯えているのだ。
「裏切られたくない」「時間を無駄にしたくない」「もう傷つきたくない」──。
これらの言葉は、恋愛の現場でよく聞く防衛的な呪文。
表面上は計算だが、その実、心を守るための盾である。
心理学的に言えば、これは“回避的愛着スタイル”の典型。
かつての失敗を思い出し、「次こそ失敗したくない」という意識が強く働く。
だからこそ人は、愛をコストとして換算しようとする。
「投資するくらいなら、最初から関わらないほうがマシ」──そうやって、痛みを避けようとするのだ。
だが、恐れの裏には必ず愛したいという衝動がある。
コスパ思考とは、愛を諦めた人の言葉ではなく、愛を慎重に扱いたい人の言葉だ。
婚活とは、その慎重さの奥にある小さな勇気を、もう一度動かすリハビリなのだ。
03|“裏切られたくない”──失われた信頼の時代
かつて結婚は、社会的にも経済的にも“信頼の制度”だった。
だが今や、その土台は崩れつつある。
離婚率の上昇、共働き疲れ、SNSで拡散される有名人の不倫──。
愛の不確実さが可視化されすぎた時代に、誰もが慎重になるのは当然だ。
現代の若い世代は、愛を信じられなくなったのではなく、信頼を預ける場所を失ったのだ。
職場も地域も家族も、長期的な支えにはならない。
だからこそ、人は「損しない恋」「傷つかない関係」を求める。
これは冷たさではなく、傷ついた心の自然な防衛反応だ。
しかし、信頼は守ることでなく、預けることでしか生まれない。
相手を信じるとは、不確実な未来を少しだけ引き受ける行為だ。
婚活とは、愛を探す旅ではなく、“信頼を回復する旅”なのかもしれない。
信頼を取り戻す力──それこそが、ほんとうの“結婚コスパ”である。
04|“自由を奪われたくない”──他者との距離に怯える心理
「結婚すると自由がなくなる」と言う人は多い。
しかし、本当に失いたくないのは自由そのものではなく、自分のライフスタイルかもしれない。
誰かと生きることは、相手のリズムと自分のリズムをすり合わせること。
その“非効率さ”にこそ、関係の真実がある。
私たちは今、「関わり続けること」に耐えづらい社会に生きている。
気まずくなればブロックし、面倒ならフェードアウトする。
だが結婚は、逃げ場のない関係の象徴だ。
だからこそ、多くの人は“自由”という言葉で恐れを包む。
けれど、自由とは「孤立の自由」ではない。
あるドイツの政治哲学者の言葉を借りるなら、自由とは関わりの中で自らを立ち上げる力である。
誰かと衝突し、譲り合いながらも、自分を発見していく。
婚活とは、自由を失う練習ではなく、他者と生きる自由を選ぶ訓練なのだ。
05|“失敗したくない”──自信を失った心の風景
「結婚はコスパが悪い」と感じる心の奥には、「自分には結婚を成功させる力がないのでは」という静かな自己不信が潜んでいる。
親の不仲、過去の恋愛の失敗、SNSで見た離婚の悲劇──。
それらの記憶が「どうせ自分も同じだ」と囁く。
しかし、うまくいかない結婚の多くは、愛が足りなかったのではなく、愛し方を知らなかっただけだ。
誰も最初から恋愛上手ではない。
婚活とは、完璧な相手を探すことではなく、自分の「関係する力」を取り戻すプロセスだ。
「失敗したくない」と思うのは、防衛反応であり同時に誠実さの証でもある。
その恐れを抱えたまま一歩を踏み出す勇気こそ、真の自己効力感(self-efficacy:自分ならできる、と信じる力)を育てる。
婚活心理学の視点から言えば、“成功する婚活”とは理想の相手を見つけることではなく、恐れを抱えたまま愛に向かう自分を取り戻すことに他ならない。
06|「コスパ悪い」と感じるあなたへ
「コスパ悪い」と感じるあなたは、冷めているのではなく、臆病なほど誠実なのだ。
損をしたくない。自由を失いたくない。
失敗したくない──そのどれもが人間らしい防衛心理だ。
だが、恐れのままでは、誰とも深くつながれない。
愛は保証のない投資であり、同時に、もっとも確かな自己成長の場でもある。
結婚とは、損得では測れない“心の運用”であり、不完全さを通して自分を知るプロジェクトなのだ。
「コスパ悪い」と思うその違和感こそ、あなたがまだ誰かを必要としている証拠だ。
人は孤立した計算機ではない。
非効率な愛の中でこそ、「生きている」という実感が芽生える。
計算の外にある小さな無駄──そこに、愛の種が宿っている。
恐れを抱くことは悪ではない。
その恐れが、誰かを求める力へと変わる瞬間こそ、婚活の本当の始まりだ。
次回以降では、この“割に合わない違和感”をさらに掘り下げ、5つの心理的メカニズム──不確実性・補完・意味・反脆弱性・時間──をひとつずつ解き明かしていく。
(婚活メンター・ひろ)
次回予告|第2話「結婚とお金──“コスパ悪い”と言われる本当の理由」
次回は、経済的な「コスパ論」の裏にある心理を読み解く。
独身は本当に得なのか。共働きは損なのか。
数字では測れない“幸福のコスト構造”を、婚活心理学の視点から分析していく。
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