新着情報

婚活心理学

「性体験がないと恥ずかしい?」──婚活と結婚のリアルを考える 婚活心理学vol.5

画像 8

【婚活中の皆さん、そして結婚を真剣に考えている皆さん。突然ですが、「性体験がないのは恥ずかしい?」と聞かれたら、どう答えますか?この問いに対する答えは、時代や文化、個人の価値観によって大きく変わります。しかし、多くの人がこの問題に対して他者の視線を気にしてしまうのも事実です。今回の婚活心理学セミナーでは、「性体験の有無が結婚にどう影響するのか?」「婚活に不利なのか?」、さらには「性的指向の多様性」に触れ、「これからの結婚生活において本当に重要なことは何か」を探りながら、皆さんと一緒に考えていきます。】



◉内容

 第1章:「性体験がない=恥ずかしい?」世代と価値観の変遷

 第2章:「結婚したいけど性体験を望まない人」も増えている

 第3章:「結婚後に嗜好が変わることもある」

 第4章:「結婚後の性生活の課題と解決策」

 第5章:「恥ずかしさを超えて、自分らしい愛を見つける」



第1章:「性体験がない=恥ずかしい?」世代と価値観の変遷


2024年2月15日、NHKの番組「あさイチ」で「人に言えない話」と題した特集が組まれ、「性体験がないのは恥ずかしいこと?」というテーマが取り上げられました。


番組内で明らかになったのは、「性体験がない=恥ずかしい」という負のビリーフがとっくの昔に崩れ落ちていたこと。

世代によって価値観が大きく異なるという点。


特に30代後半から50代前半の世代は「性体験がないのは恥ずかしい」と感じる傾向が強いのに対し、若い世代はそれほど気にしていないというのです。
なぜ、こうした違いが生まれるのでしょうか?とても興味深いです。


1980年代後半~1990年代前半のバブル期には「恋愛至上主義」の風潮があり、セックスは「大人の証」「通過儀礼」のように捉えられていました。

村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』ブームを想い出してみてください。


帯には「100%の恋愛小説」というコピーが踊り、Xmasシーズンを意識したかのような赤と緑の表紙カバーが掛かった本を大切な人に贈るのが流行りました。単行本を裸のまま小脇に抱えて、電車に乗ったり、街中を歩くのが当時の若者のファッションアイテムでした。

作中では、登場人物たちが性と愛、孤独の中で自己を確立しようともがき苦しみます。そこには、「性体験=成長」という当時の価値観が色濃く反映されていました。




しかし、バブル崩壊後、恋愛観は大きく変化し様変わりします。パソコンとインターネットの普及や「オタク文化」の台頭により、恋愛やセックスに対する価値観が多様化。現代の若者(特に35歳以下)は、「たまたま出会いがなかっただけ」と軽く受け流す傾向が強いのです。

また、この世代の女性の約40%が未経験であるというデータもあり、「女性が性体験を持たないこと」はもはや珍しいことではなくなっています。


婚活市場でも、「結婚前の性体験」は必須条件ではなくなりつつあります。
この変化は、「性体験の有無よりも、どんな結婚生活を築きたいか」が重要になってきた証拠とも言えるでしょう。

つまり、性体験もまた、個人の選択の問題となったのです。



第2章:「結婚したいけど性体験を望まない人」も増えている


さて、最近、「アセクシュアル(Asexual)」という概念が広く認知されつつあります。

皆さんは聞いたことがありますか?


NHKでもこのテーマを扱ったドラマ『恋せぬふたり』が2022年1月10日から3月まで放送され、多くの視聴者の共感を呼びました。

このドラマは、恋愛や性的関係に興味を持たないアロマンティック・アセクシュアルの主人公たちが、自分らしい生き方を模索しながら新たな家族の形を築いていく姿を描いています。


アセクシュアルとは、「性的欲求を持たない、または非常に低い関心しか持たない人々」のことを指します。

これは、アメリカ心理学会(APA)や世界保健機関(WHO)によっても研究されており、医学的な診断や障害ではなく、性的指向の一つとして理解されています。


彼らは恋愛感情を持つこともあれば、持たないこともありますが、「セックスをしない恋愛関係」や「精神的なつながりを重視したパートナーシップ」を築くことを望む傾向があります。


また、アセクシュアルの中にも多様性があり、ロマンティックな関係を求める人(ロマンティック・アセクシュアル)や、恋愛感情も抱かない人(アロマンティック・アセクシュアル)などが存在します。


結婚=セックスという従来の古典的な図式が崩れ、「一緒に人生を歩むパートナーシップとしての結婚」が注目されるようになっています。
こうした考え方が広がる中、「結婚するなら性生活はどうするか?」という問いの答えも、多様になっています。


結婚にはさまざまな形があります。

  • 性生活を重視する夫婦
  • 子どもを持つために性生活を営む夫婦
  • 性的な関係を持たないパートナーシップを築く夫婦

大切なのは、「世間の基準」ではなく、「自分たちが何を求めるか」です。


エーリッヒ・フロムは『愛するということ』の中で、愛とは単なる感情ではなく、能動的に学び、育てていくものであると述べています。

この視点を婚活にも応用すると、結婚とは「単に条件が合う相手を見つけること」ではなく、「相手との関係を深め、互いを成長させる場である」と捉えることができます。





第3章:「結婚後に嗜好が変わることもある」


人の嗜好や価値観は、結婚後にも変化します。例えば、昔は苦手だった食べ物が大人になると好きになるように、性的な価値観も経験や環境の変化によって変わることがあります。


これは、個人の成長や心理的な成熟、パートナーとの関係性の深まりによって影響を受けることが多いとされています。特に、安心できる環境や信頼関係の中では、新しい価値観や欲求が自然と芽生えることもあります。


例えば、過去にセクシュアルな関係に対して消極的だった女性が、結婚後にパートナーとの信頼関係が深まることで、新たな楽しみや親密さを発見するだけでなく、新たな嗜好に目覚めるケースもあります。


過去に性的トラウマがあった女性が、パートナーの理解と支えによって徐々に自分の本来の嗜好を受け入れ、積極的に関わるようになることもあります。

実際、カウンセリングの現場では「結婚後に夫婦関係が安定し、性生活が前向きに変化した」という事例が多数報告されています。


また、結婚前には特定の性的嗜好を持っていなかった人が、パートナーとの関係を深める中で新しい興味を持つこともあります。

たとえば、スキンシップの重要性に気づき、手を繋ぐことやハグを積極的にするようになったり、逆にスローテンポな愛情表現のほうが自分には合っていると感じるようになったりすることもあります。


「自分はこうなんだ」と決めつけずに、パートナーと話し合いながら、お互いにとって最適な関係を築いていくことが大切です。


社会心理学者のエーリッヒ・フロムは、愛の成熟には自己の確立が不可欠であると強調しています。

婚活を進める上で、「相手とどう関係を築くか」だけではなく、「自分はどのような愛のあり方を求めるのか」を問い直すことも、より充実した関係性を築く上で重要です。


性的価値観は、結婚後も変化し続けることがあります。
また、パートナーとの関係が安定すると、過去の性的トラウマが癒され、新しい価値観が生まれることもあります。

心理学的な視点から見ると、人間のセクシュアリティは流動的であり、ホルモンバランスだけでなく、関係性や経験によって変化していくものなのです。


こうして見てくると、結婚前の「性体験がない」ことなど些細な問題に過ぎないと思えてきます。



第4章:「結婚後の性生活の課題と解決策」


結婚後の性生活には、さまざまな役割があります。

フロムはまた、愛を「与えること」として捉え、真の愛は自己犠牲ではなく、相手の幸福を願う行為の中にあると述べています。


この考え方を性生活に当てはめると、単なる欲望の満足ではなく、相手の安心感や幸福感を高めるためのコミュニケーション手段として重要であることがわかります。


4-1 夫婦の性生活における主な課題

結婚後、性生活に関する悩みが生じることは珍しくありません。以下のような要因が、夫婦間のセクシュアルな関係に影響を与えることがあります。


 1. 夫婦の性生活に対する価値観のズレ
片方のパートナーが頻繁な性生活を望む一方で、もう一方がそれほど重要視していない場合、すれ違いが生じることがあります。お互いの希望や期待を率直に話し合うことが重要です。


 2. 妊娠・出産後の性欲の変化

女性は妊娠・出産を経てホルモンバランスが大きく変化し、性欲が減退することがあります。また、育児による疲労やストレスが、夫婦間の親密さに影響を与えることも少なくありません。


 3. ストレスや環境の変化による性的欲求の低下

仕事のストレス、育児、家族の介護などの要因が、性生活の優先順位を下げることがあります。パートナー間で心のケアを行い、リラックスできる時間を作ることが大切です。


 4. 加齢によるホルモンバランスの変化

年齢を重ねるとともに、ホルモンバランスが変化し、性的欲求が減退することがあります。これは自然な変化であり、夫婦の関係性を再定義しながら、スキンシップや愛情表現の方法を見直すことが必要になります。


 5. 性的嗜好の違いが争いの原因に
夫婦の間で性的嗜好が異なる場合、互いの価値観や欲求をどうすり合わせるかが課題となります。

例えば、パートナーの求める性的行為に違和感を覚える場合、それをどう受け入れ、または話し合うかが重要です。


性的嗜好の不一致がストレスの要因となり、コミュニケーション不足やフラストレーションを引き起こすケースも多く見られます。こうした問題を解決するためには、率直な対話と相互理解が不可欠です。



4-2 解決策と向き合い方

 1. 率直なコミュニケーションを心がける

性に関する話題はタブー視されがちですが、健全な関係を築くためにはオープンな対話が不可欠です。感情を押し殺さず、互いの意見を尊重しながら話し合いましょう。


 2. プレッシャーをかけずに、相手のペースを大切にする

どちらか一方が無理をするのではなく、相手の気持ちを尊重し、自然な形で関係を深めることが大切です。


 3. スキンシップを大切にし、セクシュアリティを広い視点で捉える

性交渉だけが夫婦の親密さを示す手段ではありません。毎朝キスを交わす、手をつなぐ、ハグをする、言葉で愛情を伝えるなど、さまざまな方法で親密さを保つことができます。


 4. 必要なら専門家の助けを求める

夫婦間で話し合っても解決が難しい場合、カウンセラーやセラピストの助けを借りることも有効な手段です。


性生活の問題は、夫婦関係全体のバランスと深く関わっています。

単に「頻度」や「相性」の問題ではなく、互いの信頼や理解の上に成り立つもの。だからこそ、オープンな対話と柔軟な対応が、幸せな結婚生活を維持する鍵となるのです。






第5章:「恥ずかしさを超えて、自分らしい愛を見つける」


「性体験がないと恥ずかしい?」
答えは、NOです。


この問いに対する答えは、個人の価値観や生き方によって異なります。

そして、その答えを決めるのは他者ではなく、自分自身です。


「世間の常識」に縛られるのではなく、つまり「人の人生を生きない(他人の考えで自分の人生を生きない)」こと。

大切なのは、「自分がどうありたいか」を見つめることだけなのです。


婚活においても、結婚後のパートナーシップにおいても、重要なのは「相手とどう関係を築くか」という視点です。

愛と結婚の形は一つではなく、それぞれの関係性の中で模索し、築き上げていくものです。


エーリッヒ・フロムは『愛するということ』の中で、愛は学び、実践し、成長するものだと述べています。

これは結婚にも当てはまり、性生活や親密さのあり方も、一朝一夕に確立されるものではなく、互いに学び合いながら築いていくものです。


 1. 自分の価値観を知り、相手と共有する

性体験の有無に関わらず、結婚生活において大切なのは「お互いの価値観を知ること」です。

婚活中から、性に関してもオープンなコミュニケーションができるかどうか。


たとえば、

  • 性生活をどのように捉えているか
  • 親密さのあり方にどんな期待を持っているか
  • お互いのペースを尊重できるか

などを話し合うことが、パートナーシップを円滑に進める上での鍵となります。


 2. 性に関する対話をタブーにしない

性に関する話題をタブー視せず、パートナーと率直に話し合える関係を築くことも重要です。

結婚生活の中での性のあり方は、時間の経過とともに変わることがあります。

その変化に対して、オープンなコミュニケーションを取り、理解し合う姿勢を持つことが、長く良好な関係を維持する秘訣です。


 3. 愛とは相互理解と成長のプロセス

フロムの言葉を借りれば、愛とは「他者の成長を願う意志」です。

結婚においても、互いの価値観を尊重し、支え合いながら関係を深めていくことこそが、本当に大切なこと。


性体験の有無を気にするのではなく、自分がどのような愛を求め、どのようにパートナーと向き合っていきたいのか。その視点を持つことが、充実したパートナーシップを築くための第一歩です。


性体験がないのは、「恥ずかしいかどうか」ではなく、「自分らしい愛の形とは何か」。
その問いに向き合うことで、婚活中の今からシフトチェンジを起こし、真に幸せな結婚へとつながる選択を!



(婚活メンター・ひろ)





【バックナンバー】



【関連記事&ページ】