ヒロの婚活心理学
何度でもやり直せる自分へ──エリクソンに学ぶ“レジリエンス婚活”のすすめ 婚活心理学Vol.27
「婚活がつらい」「もう頑張れない」──それでも、また一歩踏み出したいあなたへ。
「婚活疲れで、もう限界かも」「どうして私ばかり、うまくいかないの?」
──そう思ったことがある人に、いま伝えたいのは、「あなたはダメのではなく、ただ疲れているだけだ」ということ。
「婚活がうまくいかない」「婚活疲れで限界」という声が増えています。
そんな時こそ、自信よりも“自己効力感”という心の力が鍵を握ります。
そして、婚活に本当に必要なのは“自信”よりも、回復する力=レジリエンスかもしれない、ということです。
レジリエンスとは、傷つかない心ではなく、傷ついても立ち直れる力のこと。
心がすり減る前に、レジリエンスの視点から自分を立て直してみませんか?
心理学では近年、「自己効力感」や「柔軟性」と並んで、幸福度や人間関係の質と強く相関する概念として注目されています。
本稿では、「レジリエンス心理学」と、現代心理療法の巨匠ミルトン・エリクソンの言葉を軸に、「婚活で心がすり減る理由」と「そこから立ち直る具体的な方法」を探ります。
✔️ 婚活に疲れ、もう頑張る気力がわかない人
✔️ 何度もうまくいかず、自信を失ってしまった人
✔️ 相手に合わせすぎて、自分を見失っていると感じている人
──本稿の読後、あなたはきっとこう思えるはずです。
「私は変われる」「また、出会い直せる」と。
それは、自己肯定感をただ高める目的ではありません。
私が永年、婚活の現場で培ってきた、“頑張りすぎないで進むための心理的な柔らかさ”を育てる実践の記録です。
この論考は、あなたが“もう一度、未知の自分に会い直す”ための旅の始まりになるかもしれません。
【目次&内容】
婚活心理学Lesson序|婚活疲れに必要なのは、自信ではなく“レジリエンス(回復する力)”だった
婚活心理学Lesson 1|ミルトン・エリクソンとは何者か?──“苦難を生きる力に変えた男”の人生
婚活心理学Lesson 2|レジリエンスとは「跳ね返す力」ではなく「意味づけを変える力」
婚活心理学Lesson 3|“自己催眠”としての婚活──エリクソン催眠が教える「無意識の力」
婚活心理学Lesson 4|失敗の中にこそ“自己回復力(レジリエンス)”は育つ
婚活心理学Lesson 5|婚活の出会いは“偶然”ではなく“能動性”から生まれる
婚活心理学Lesson 6|“変われない自分”を責めない──柔軟性が人生を変える
婚活心理学Lesson終|「また始めよう」と言える自分へ
婚活心理学Lesson補遺|婚活とエリクソン催眠の接点──語りが変われば、出会いの風景も変わる
婚活心理学Lesson序|婚活疲れに必要なのは、自信ではなく“レジリエンス(回復する力)”だった
「もう傷つきたくない」
「またうまくいかない気がする」
「私が夢中になれる人に、出逢える気がしない」
「笑顔で会い続けるのが、ただしんどい」
「私は、結婚に向かない人間かもしれない」
──これらの声は、決して特別なものじゃない。
実際、婚活の現場では、こうした言葉を何度となく聞いてきた。
期待して、傷ついて、また笑顔をつくる。その繰り返しのなかで、自分のなかにあった「前向きさ」が少しずつすり減っていく。
最初は「きっと大丈夫」と思えていたのに、だんだんと未来を信じる力が弱くなっていく。
それは、自分を信じる力がなくなっていく感覚にも近い。
だからこそ、最初に問い直したい。
婚活に本当に必要なのは、”経験”や“自信”だろうか?
──どうも違うらしい。
どれだけポジティブな言葉を口にしても、どれだけ自分を鼓舞しても、現実がうまくいかなければ、心はついてこない。
そもそも、恋愛や結婚は、一回限りの勝ち負けではない。
「自信がある人だけが幸せになれる」なんてことは、ない。
婚活に本当に必要なのは”回復する力”
婚活に必要なのは、自信ではなく、“回復する力”だと思う。
期待が裏切られても、断られても、それでも「もう一度、出会いたい」と思える気持ち。
そうした内側からの力こそが、ほんとうのレジリエンスだ。
そのヒントになるのが、アメリカの心理療法家、ミルトン・エリクソンだ。
彼は17歳のとき、突然、全身が麻痺する病にかかった。「一生、歩けない」と医師に告げられた。
けれど彼は、自分を見捨てなかった。
動かない身体をじっと観察し、わずかに動く筋肉に気づき、そこから「歩く」という動作を、最初からやり直そうとした。
「できなくなったこと」ではなく、「まだできること」に目を向ける。
この姿勢こそが、レジリエンスの本質だと思う。
彼がしたのは、単なる“回復”ではない。人生の意味を、自分でつくり直すような画期的な行為だった。
それは婚活でも、同じだと思う。
婚活は、いわば「希望の立て直し」だ。気になる人から返事が来ない。お見合いのあとに音信不通になる。「この人なら」と思った相手に断られる。
──そんな経験を重ねるうちに、
「私に魅力がないのかもしれない」
「もう誰にも選ばれないかもしれない」
そう思ってしまうことがよくある。
婚活疲れへまっしぐら。でも、そこで終わらせる必要はない。
レジリエンスとは、過去の痛みを無理に忘れることではない。
自分の弱さを否定することでもない。
それは、「それでも、もう一度誰かと出会いたい」と願う気持ち。
もう一度、誰かと向き合うことに前向きになれる、自分の中の小さな力。
あなたは、何度でも、出会い直せる
エリクソンは言っている。
「人間には、回復するための力がもともと備わっている。必要なのは、それを思い出すことだけだ」
婚活疲れにハマっている人にも、その力はきっとある。
ただ今は、少し思い出しにくくなっているだけだ。
この論考では、そんな「回復する力」に光を当てていく。
- なぜ婚活はこんなにも心をすり減らすのか?
- どうすれば、自信がなくても進めるのか?
- 「また始めよう」と思える自分になるには、何が必要か?
そんな問いに、エリクソンの知恵を借りながら、ひとつずつ応えていく。
そして最後に、ただ一つ、伝えたいことがある。
「あなたは、何度でも、出会い直せる」
それは、婚活だけに限らない。
人生において何度でも、自分と、誰かと、新しく出会い直せる。
この論考が、その一歩になることを願って次章へ進めよう。
婚活心理学Lesson1|ミルトン・エリクソンとは何者か?──“苦難を生きる力に変えた男”の人生
婚活の現場で、「もう立ち上がれない」と感じる瞬間がある。
希望を抱くたびに裏切られ、少しずつ心がすり減っていく。
そんなときに必要なのは、誰かの完璧な成功談ではない。失敗と挫折をくぐり抜け、なお生き直そうとした誰かの物語だ。
ミルトン・エリクソンは、まさにそんな人生を生きた人だった。彼は理論家ではない。研究室の机で概念を組み立てた人でもない。
彼の人生そのものが、一つの壮絶な「再起のプロセス」だった。
麻痺と沈黙──17歳で世界が崩れた日
17歳のとき、エリクソンは急性ポリオに倒れた。朝、元気に動いていた身体は、夜にはほとんど動かなくなっていた。視力も、声も、自由を奪われた。
医師は言った。
「もう二度と歩くことはできないでしょう」
未来を断ち切られるような宣告。だが彼は、その絶望の中でただ沈黙していたわけではない。
すべての刺激が閉ざされたベッドの上で、彼は“わずかに動く足の指”に気づく。微かな呼吸、背中の感覚、まばたき──それらを観察し、自らの身体と心に問いかけた。
「できなくなったこと」ではなく、「まだできること」に目を向ける。
この姿勢が、彼の生涯の仕事を形づくる核となった。
「どうすれば戻れるか」ではなく「どう生き直すか」
エリクソンは、“元の自分に戻る”ことを目指さなかった。むしろ、「この状態のままで、どう生き直すか?」を問い続けた。
それは、過去への執着を手放し、未来を創造すること。
“ありのまま”を肯定するのではなく、“今の中にある可能性”を育てていく力。
のちに彼が築く「エリクソン催眠」の核心も、ここにある。
気づかせる人──治すのではなく、呼び覚ます
心理療法家となったエリクソンは、決して人を「治そう」とはしなかった。
診断や指示をせず、薬も使わない。彼がしたのは、本人が自分の中に眠る力に気づくための“問い”を投げかけること。
「私がするのは、人の中の“治る力”に、本人が気づくよう手助けすることです」
その姿勢は、励ましに満ちていた。支配でも導きでもなく、共に歩む人としての在り方だった。
だから彼は“治療者”というより、“回復の伴走者”と呼ばれる方が相応しい。
婚活と「閉ざされた未来」
婚活の中で感じる絶望には、枠がある。
「いい人がいない」「断られる」「自分なんて」──これらは、表面に現れた言葉だ。
だがその奥には、もっと深い諦めがある。「もう未来が開かれていないのではないか?」
この感覚が、人の行動を止める。だが、エリクソンはそれにこう答える。
未来は、誰かから与えられるものではない。未来は、自分の中の“わずかに残っている何か”から再構築できる。
それは大げさなヒロイズムではない。
日々の小さな“気づき”と“再選択”の積み重ねである。
回復とは「意味を取り戻す」こと
婚活疲れに陥ったとき、人は自分を責めたり、条件を見直したりする。だが、ほんとうに大切なのは、“意味の再構築”だ。
「なぜ私は、もう一度、誰かと出会いたいのか?」
「その出会いは、自分にとってどんな意味を持つのか?」
婚活とは、ただの出会い探しではない。
自分の人生に新たな意味と物語(人生脚本)を与え直す行為でもある。
エリクソンが教えてくれるのは、どんなに傷ついても「まだできること」から始めていいということ。
婚活疲れにも、それは有効なはずだ。
だからこそ、これは“婚活レジリエンス”の出発点なのだ。
婚活心理学Lesson2|レジリエンスとは「跳ね返す力」ではなく「意味づけを変える力」
“レジリエンス”という言葉を、あなたはどう受け止めただろうか?
「打たれても折れない強さ」
「逆境に負けない精神力」
「立ち直るスピード」
──もちろん、それらも一理ある。けれど、婚活の現場で本当に求められるのは、そんな“跳ね返す”力だろうか?
私たちが直面しているのは、もっと静かで、見えにくい苦しみだ。
誰かに断られた。
メッセージが途絶えた。
たった一度のデートのあと、何も言われずに距離を置かれた。
それらは「小さな失敗」のように見えて、胸の奥には静かに火が灯る。
「私はまた、選ばれなかったんだ」と。
だからこそ必要なのは、“打たれ強さ”ではなく、「その出来事を、どう自分の中で意味づけなおすか」という力だ。
「意味づけ不能」な体験は、人を深く傷つける
婚活における失敗とは、ただの結果の不一致ではない。それは、「自分の経験をどう理解していいかわからない」ことなのだ。
たとえば、お見合い後に音沙汰がない。
仮交際が突然終了する。
共感してもらえると思った話題でスルーされた。
それらに直面したとき、人はまず「なぜ?」と考える。
しかし“答えの出ない問い”に長く囚われると、自分を責めはじめるしかなくなる。
「やっぱり私には魅力がないのかも」「もっと上手く話せていたら」──そんなふうに。
でも、それは真実ではない。
それは“意味づけ”のしかたが、自罰的な方向に偏っているだけなのだ。
エリクソンは「意味づけ直す力」を育てた
ミルトン・エリクソンは、セラピーの中で“問題”の再定義をする達人だった。
たとえば、相談に訪れたクライアントに、彼はこんなふうに語りかける。
「あなたがこうして相談に来た時点で、もう回復は始まっているんですよ」
本人が“問題”と認識しているものの中に、すでに“変化の兆し”を見出す。
彼の視点はつねにこうだった:
「なにが悪かったか?」ではなく、「どこに新しい意味が芽生えているか?」
婚活でも、これはそのまま当てはまる。
たとえ断られても、たとえ返事がこなくても、
「それでも、もう一度誰かと出会いたいと思っている自分がいる」
「次こそは、もっと素直に話してみようと決めている自分がいる」
──それはすでに、意味づけの更新が起きている証拠だ。
自分の経験を、“語り直す”こと
レジリエンスとは、ただ我慢することではない。うまくいかない出来事を、“別の角度から意味づけ直す力”である。
たとえば、交際終了の通知が届いたあと、それを「失敗」と見なすか、あるいは「自分が譲れないことが見えてきたプロセス」ととらえるか。
その“語り直し”の選択が、あなたの未来を形づくる。
「あの人との出会いで、自分の弱さを知った。同時に、それを語れる自分も発見できた」
──この一文だけで、人生は前に進む。
婚活こそ、“意味づけ”の連続である
うまくいかなかった出来事を、ただ終わったものにしない。その中に“今の自分が選んだ意味”を見出していくこと。
それが、婚活におけるレジリエンスだ。
「どんなふうに意味づけ直せるか?」その問いを、そっと自分に差し出せる人。
その人はもう、“次の物語”を歩み始めている。
婚活心理学Lesson3|“自己催眠”としての婚活──エリクソン催眠が教える「無意識の力」
婚活がつらくなるとき、婚活者たちはある共通の言葉を口にする。
「考えすぎて、うまくいかない」
「何を話せば、仲が深まるのかわからなくなる」
「最初はよかったのに、もっと私に合う人がいるように思えて退屈になる」
──それは、単なる“緊張”や“性格のせい”ではない。
エリクソンなら、こう言うだろう。
「人は、無意識のうちに“自分に対して催眠をかけている”」
そしてこの“自己催眠”こそが、婚活という試練の場で、婚活者たちの自由を縛り、心の深部を萎縮させ、未来の選択肢を静かに奪っていくのだ。
自分にかけた“否定的暗示”
「どうせ私なんて選ばれない」
「こんなこと言ったら嫌われるかも」
「また傷つくくらいなら、最初から踏み込まないほうがいい」
──これらは、明確な言葉にならずとも、心の内側で繰り返されている“無意識の語り”である。
それは催眠と同じ構造を持つ。言葉は現実をつくる。
何度も繰り返される語りは、やがて“自分という存在の設定”になっていく。
その設定が「選ばれない私」「思慮深い私」「深く愛されない私」である限り、出会いの現場は、無言の制限で満たされてしまう。
エリクソン催眠が開いた「無意識という土壌」
ミルトン・エリクソンは、無意識を“問題の温床”ではなく、“創造の土壌”と捉えた。
彼の催眠は、従来のように“暗示を植えつける”ものではなく──催眠術の”催眠”とは似て非なるもの──、「もともとその人の中にある力」を目覚めさせるという、穏やかな革命だった。
「人はすでに、自分を回復させるリソースを持っている。ただ、それをまだ知らないだけなのだ」
(エリクソン催眠については「補遺」を参照してほしい)
婚活においても、これは大きな示唆となる。うまく話せなかったとき──それは“劣っている”のではない。
そこには、「言葉を選ぶ真剣さ」や「相手を傷つけたくない優しさ」が宿っているかもしれない。
つまり、変えるべきは“性格”ではない。
自分の内側の語り、”内的言語”そのものなのだ。
婚活における“覚醒の催眠”とは何か?
婚活が長引くほど、経験は「痛み」と「慎重さ」を増幅させていく。その結果、否定的な自己催眠はますます強化される。
「私は愛されるに値しない人間だ」
「きっとまた同じような失敗に終わる」
「頑張っても報われない自分」
だが、エリクソンの催眠は、こうした“声”と闘うのではない。
それらに覆いかぶさるように、もう”ひとつの声”を内側にそっと導入する。
たとえば、
「まだ誰にも見せていない自分の魅力が、きっとある」
「これまでの心の傷が、誰かの痛みに寄り添う力になるかもしれない」
「今は完璧な自分じゃなくても、また誰かに“会いたい”と思えた」
これは、自分を甘やかす言い訳ではない。
自分の中にもう一度“信じられる内的対話”を育てていく行為である。
エリクソンが目指したのは、あなたは「こうなるに違いない」と断言することではなく、あなたの内にある声が、「再び語り始めるのを待つ」ことだった。
婚活における“覚醒の催眠”とは何か?
婚活が長引けば長引くほど、経験は「痛み」と「慎重さ」を連れてくる。
それが、否定的な“自己催眠”をさらに強固にしてしまう。
「私は愛されやすいタイプじゃない」
「また同じように傷つくに違いない」
「努力しても報われない自分は変えられない」
けれど、エリクソンの催眠は、そうした“声”を否定したり、打ち消したりはしない。
むしろ、その上にそっと“もうひとつの声”を重ねていく。
たとえば、こんなふうに。
「自分の中に、まだ気づいていない魅力が眠っている気がする」
「過去の傷も、誰かの心に寄り添う力に変わるかもしれない」
「完璧じゃなくていい。ただ“誰かとちゃんと出会いたい”と、心が動いた」
これは、自己啓発的な励ましの言葉ではない。
“心の奥に眠る希望の火”をそっと灯し直す行為なのだ。
エリクソンのアプローチは、決して「こうなれ」と押しつけない。
そうではなく、あなたの中から「自然に生まれてくる言葉」に耳を傾けて、じっと待つ。
──それが、彼の深い受容力と、人間に対する信頼だった。
婚活をしていると、ときに“自分を信じられなくなる”体験を味わう。
けれど、だからこそ必要なのは、“否定の催眠”から、静かに抜け出すこと──ポジティブになろうとする必要はない。
無理に笑う必要もない。
ただ、小さく問いかけてみてほしい。
「本当に、私はもうダメなのか?」
その問いが、”婚活疲れ”に囚われた、あなたの中の無意識に届いたとき──眠っていた希望は、ふたたび息を吹き返しはじめる。
婚活心理学Lesson4|失敗の中にこそ“レジリエンス(自己回復力)”は育つ
婚活で味わう“失敗”ほど、心を徐々にむしばむものはない。
何度申し込んでも断られる。
やっと交際に進んだ相手に、突然別れを告げられる。
がんばってもがんばっても、「選ばれない自分」が残り続ける。
──そんなとき、人はつい“壊れた”ような気がしてしまう。「私には、もう立ち直る力がないのかもしれない」と。
でも、ミルトン・エリクソンは違う景色を見ていた。
「失敗とは、壊れることではなく、“新しい回復力”が育ち始める瞬間である」
レジリエンスは、失敗の中で静かに育つ
レジリエンスとは、特別な人だけが持っている“強さ”ではない。
それは、打ちのめされた心が、ふたたび立ち上がろうとする“習慣”のようなもの。生まれつきの性格ではなく、経験の中で形づくられていく力だ。
失敗を「終わり」と見るか、「何かが始まり直すきっかけ」と見るか。この“見方”の違いが、その人のレジリエンスを分けていく。
エリクソン自身、若い頃にポリオで身体の自由を奪われた。
だが彼は「何ができなくなったか」ではなく、「何を試せるか」を考え続けた。
「この状況から、自分は何を学び直せるだろう?」
婚活の失敗もまた、同じ問いを差し出してくる。
傷ついたその場所から、回復は始まっている
心の中に芽生える「もう一度やってみよう」という感情。それはすでに、回復の力が動き出しているサインだ。
* お断りされたプロフィールを、もう一度見直してみようと決めたとき。
* 過去の失敗談を、自分の言葉で誰かに語れたとき。
* 涙を流したあと、次のお見合いの予定を入れていた自分に気づいたとき。
──それらは、見落とされがちな“回復の兆し”である。
エリクソンは、そうした小さな回復の動きを見逃さなかった。
彼のセラピーは、劇的な変化を求めるものではない。
「あなたは、すでにやり直し始めている」
その事実に本人が気づくように、穏やかに待ち、ていねいに寄り添うこと。
それがエリクソンの方法だった。
婚活は、“自分の回復力”を試す旅でもある
婚活とは、ただ出会いを探す活動ではない。
それは、自分がどんなふうに傷つき、婚活に疲れ、どんなふうに立ち直るか──その“心の動き”を観察し、少しずつ整えていくリハビリのような時間だ。
・期待した相手に断られたとき、自分はどんな反応をするか。
・どんなことで気持ちを立て直し、もう一度前に進めるか。
・どんな言葉や関わりが、自分にとって“回復のスイッチ”になるか。
──そうしたことに目を向けられるようになると、婚活はただの苦行ではなくなる。
それは未来のパートナーとの関係においても、“困難から立ち直る力”として生きてくる。
エリクソンは言った。
「人は、すでに“回復の才能”を内側に持っている」
それは美辞麗句ではない。何百人ものクライアントとの対話から導かれた、彼の確信だった。
──失敗の中にこそ、希望の種が隠されている。
それに気づけたとき、人はほんの少し、自分を好きになれるのかもしれない。
婚活心理学Lesson5|婚活の出会いは“偶然”ではなく“能動性”から生まれる
「ときめく人がいないんです」
「いい人にさえ出会えれば、きっと変われる気がするんです」
──婚活の現場で、よく聞く声である。
けれど、その言葉の裏にあるのは、出会いを“偶然”の産物と捉える受け身の姿勢だ。
だが本当は、出会いは「起きる」のではなく、「起こす」ものである。
いつの間にか染みつく“受け身”の癖
婚活が長引けば長引くほど、気づかないうちに「誰かが変えてくれる」感覚に頼りたくなる。
プロフィールを整え、条件を揃え、あとはご縁を待つ──。
その姿勢のどこかに、「自分以外の何かが運んでくるはずだ」という期待が潜んでいる。
そして、出会えない日々が続くと、「私には魅力がないのかもしれない」「もう年齢的に手遅れなのでは」
──そんな自己否定にすら繋がっていく。
エリクソンが問いかけたのは、まさにこの“心の無力感”に対してだった。
エリクソンが見抜いた「回復の起点」
エリクソンの心理療法において、“受け身の人”という診断は存在しない。
どんな人にも、動く力・関わる力・選ぶ力がある。
ただ、長い間それを意識せずに生きてきただけなのだ。
「人は、自分が“選んでいる”と気づいたとき、初めて回復が始まる」
この言葉のとおり、出会いもまた、「誰を選ぶか」ではなく、「自分がどう関わるか」を選ぶ営みである。
「今日はどんな表情で話せたか」
「どの瞬間に心が動いたか」
「相手のどんな態度に、安らぎや違和感を覚えたか」
──そんな小さな“反応”に気づくことで、私たちはようやく「出会いの当事者」になる。
出会いとは、感受性の再編集である
同じ人と会っても、不安が強い日と、前向きな日では、見えるものがまるで違う。
つまり出会いとは、相手のスペックではなく、その相手をどう見るか”というまなざしの質で決まるのだ。
エリクソンが好んで使った言葉がある。
「人は、自分が意味を見出そうとしたものにしか、気づかない」
つまり私たちは、「いい出会い」に気づく目を、自分で育てなければならない。
- どんな会話が自然に続いたか
- 相手の話のどこで自分が笑えたか
- その沈黙は心地よかったか、それとも不安だったか
──こうした小さな体感が、出会いの“編集点”になる。
出会いを「始められる人」になる
婚活は、ただ偶然を待つ場ではない。それは、関係という流れを、自ら生み出す行為である。
・気まずい沈黙を打ち破るために、何が言えるか
・相手の反応が薄いとき、自分からどんな空気をつくれるか
・目の前の人を、「条件」ではなく「人間」として見ようとできるか
──そんな“能動性”の積み重ねが、出会いの質を大きく変える。
婚活に迷ったときこそ、自分にこう問い直してほしい。
「私は、いま出会いの流れに関わっているだろうか?」
「それとも、ただ受け身で立ち止まってはいないか?」
出会いは、流れてくるものではない。自分への“問い掛け”と、状況に“関わろうとする意欲”によってしか始まらない。
そして、始める力は、いつだって自分の中にある。
婚活心理学Lesson6|“変われない自分”を責めない──柔軟性が人生を変える
「また、ダメだった」
「私、やっぱり結婚できないかも」
──婚活でうまくいかない日が続くと、誰もが一度はこんな言葉を心に浮かべる。
そして、そのたびに自分を責めてしまう。
「なんで私は変われないんだろう」と。
でも、本当に必要なのは“もっと頑張ること”ではない。
必要なのは、「変われない自分」を責めないという柔らかい態度だ。
鍵になるのは、“柔軟性”──視点を少しずらしてみる力である。
「正しさ」より「可能性」に触れたとき、人は動き出す
心理療法家ミルトン・エリクソンは、こう語っている。
「人が変わるのは、“正しさ”に納得したときではなく、“可能性”を感じたときだ」
「この方法が合わないなら、他のやり方を試してみよう」
「この人と合わなくても、次は違う関係が築けるかもしれない」
──そんな視点のゆるやかなシフトが、人生の流れを変えていく。
婚活で一度つまずくと、自分を「ダメな人」と決めつけがちだが、うまくいかなかった理由は、あなたの人格や能力ではなく、タイミングや相性といった外部要因かもしれない。
「合わなかった」というだけのことを、なぜ私たちは「自分が足りなかった」と変換してしまうのか?
そこには、“自己への失望”という見えない重荷がある。
“小さな失望”の蓄積が、自信をむしばむ
婚活の現場には、直接的な拒絶よりも、曖昧な沈黙が多い。
・返事が遅い
・LINEが既読スルーになる
・仮交際が自然消滅する
──こうした小さな出来事の連続が、「またうまくいかなかった」という感覚を積み重ねる。
これは、“自己失望”と呼ばれる心理状態。
小さな失望の反復が、やがて「どうせ私なんて…」という諦めに変わり、婚活疲れに陥っていく。
このループから抜け出すには、「うまくいかせようとする努力」ではなく、柔らかく見方を変える力が必要だ。
・一度断られても、別の人と話してみよう
・話が噛み合わなくても、もう少しだけ違う話題を試してみよう
・「合わない人を避ける」ではなく、「合う人の見つけ方」を工夫しよう
──小さな軌道修正こそが、自分を守り、流れを変える最初の一歩になる。
余白が生まれると、人は勝手に変わっていく
エリクソンは「変化はコントロールできない」と考えていた。
「変化とは、強いるものではなく、許される空間の中で自然に芽吹くものだ」
その“空間”とは、言い換えれば、自分を責めずにいられる心の余白のこと。
婚活でも、「変わらなきゃ」「いい人に見せなきゃ」と自分を締めつけると、笑顔が硬くなり、会話が表面的になっていく。
すると、せっかくの出会いも“営業トーク”のようになってしまう。
そんなときは、無理に気合いを入れるのではなく、いったん立ち止まってみてほしい。
・予定のない休日に、婚活のことを考えずに過ごしてみる
・条件のフィルターを外して、「居心地のいい人」に目を向けてみる
・沈黙を「失敗」ではなく、「観察の時間」として受け止めてみる
余白が生まれると、人は勝手に変わっていく。呼吸が戻り、笑顔が戻る。
そして、それが次の出会いを呼び込む。
「変わらなきゃいけない」ではなく、「変われる私がいる」
婚活は、努力が裏切られることもある世界だ。真剣に向き合うほど、結果が出ないときのダメージは深い。
でも、そこで自分を罰してしまっては、心はどんどん固くなる。
だからこそ、自分にこう言ってあげてほしい。
「私は、もうすでに、変われる力を持っている」
変わるのは、理想の誰かになることではない。
揺れながら、迷いながら、ほんの少しずつ視点を変えながら、「いまここにいる自分」とうまくつきあっていくこと。
その柔らかさが、人生の舵を自然に切り替えてくれる。
婚活心理学Lesson終|「また始めよう」と言える自分へ
婚活の“卒業”とは、誰かと結ばれることではない。
本当に大切なのは、何度つまずいても、自分を見限らなかったという静かな尊厳を取り戻すことだ。
「私は、まだ、大丈夫だ」
その一言を、心のどこかでそっとつぶやけるとき、人はすでに立ち上がり始めている。
それが、ミルトン・エリクソンのいう“レジリエンス”──傷ついたあとに、自分を見捨てずにいられる力のことだ。
「また始めよう」と思える、その一瞬のゆらぎを信じて
「また失敗するかも」
「また傷つくだけかもしれない」
──そんな予感に足をすくわれそうになりながらも、
心のどこかで、「もう一度だけ」と思える瞬間がある。
その小さな動きに、名前をつけるなら、それは“回復力”だ。
自分を責め続ける思考のループから、そっと一歩だけ外へ出てみる勇気。
それが、婚活における最も静かで、最も尊い再出発の合図である。
エリクソンは言う。
「人は、“過去を忘れられたから”前に進めるのではない。過去を抱えたまま、“いま”と和解することで、未来が動き出すのだ」
だからこそ、自分にこう許してほしい。
「もう一度やってみよう」
「また会いに行ってみよう」
「もう一度だけ、自分を信じてみよう」
誰かと出会う前に、自分に出会い直す
「婚活疲れ」という言葉がある。
それは、拒絶された痛みの蓄積であり、期待し続けたことの代償でもある。
でも、本当につらいのは、拒絶されたことそのものではない。
もっとも深く私たちを傷つけるのは、そうした出来事のたびに、
「やっぱり私は愛されない人間なんだ」と、自分で自分に言い聞かせてしまうことではないだろうか。
「どうせまたダメだ」
「こんな自分じゃ誰にも選ばれない」
──その思い込みこそが、次の出会いの可能性を静かに閉ざしていく。
けれど、自分をあきらめなかった人だけが知っている。
“誰かと出会う”というのは、実は、“自分に出会い直す”ことでもあると。
「応答する力」は、いつだってあなたの中にある
「応答する力」とは、自分の心にまだ反応する力が残っていることを信じることだ。
他者に完璧な返答を用意することではない。大きな愛をすぐに示すことでもない。
ただ、心のどこかで、「まだ終わりじゃない」と感じていること。
それが“応答”の第一歩になる。
たとえば、誰かに傷つけられた記憶を持つ人が、次の誰かの優しさを、すぐには信じきれなくてもいい。
それでも、ほんの一瞬、視線を交わすことができたなら、それはすでに、回復の始まりである。
閉じていた扉を無理にこじ開ける必要はない。
ただ、その扉の前に、今日も立ち続けている自分を誇っていい。
「また始めよう」──それは、何度でも“自分を選び直す”ということ
婚活とは、相手を選ぶ航海ではある。
けれど、それ以前に──「自分を選び直す旅」なのかもしれない。
他人の価値観や、条件や、世間の声にかき消されそうになる中で、「私は、こういう自分を大切にしたい」
「この感覚を、偽りたくない」──そう思える自分を選び続けること。
そして、また一歩、誰かに向かって歩き出すこと。
その積み重ねの先に、結果として、結ばれる誰かが現れるかもしれない。
でも仮に、そうでなかったとしても。
「それでも私は、私と共にここまで来た」という確かな実感は、あなたの中で決して失われることはない。
だから、もう一度、何度でも──「また始めよう」。
誰かと出会うために。自分と和解するために。人生を、もう一度、自分の手に取り戻すために。
この航海のどこかで、私たちの言葉が、あなたの心の片隅で、ふと立ち止まるきっかけになれたなら。
あなたが、自分の人生と「もう一度、はじめまして」と言えるその瞬間まで。
私たちは、いつでも、隣にいられたらと願っている。
婚活心理学Lesson補遺|婚活とエリクソン催眠の接点──語りが変われば、出会いの風景も変わる
「催眠」と聞いて、あなたの頭にまず浮かぶのは、おそらくテレビのバラエティで見かける“催眠術”だろう。
目が虚ろになり、操られるように奇妙な行動を取る──あの演出だ。
だが、ミルトン・エリクソンが生涯をかけて探究したのは、そうした支配的・演出的な催眠とはまったく異なる世界だった。
彼の“催眠”は、他人の心を操る技術ではない。
それは、人が無意識のうちに自分にかけてしまっている「否定の語り」を、そっと書き換えていく対話の技法だった。
婚活でも、私たちはよく、こんな言葉を口にしている。
「また同じパターンで終わる気がする」
「どうせ結婚は、自分には無理かもしれない」
「もう誰も、本気で私を選んでくれない気がしてる」
──そうしたつぶやきは、どこかで自分に向けて繰り返し聞かせてきた、“無意識の語り”だ。
エリクソンなら、こう言うだろう。
「人は、自分で自分に催眠をかけているのです」
数年前、初対面での会話に悩む女性クライアントがいた。
話が続かず、沈黙が気まずくて、何度も断られてきた。
「私は人と話すのが苦手なんです」と、彼女は言った。
でも、ゆっくり話を聴いていくと──エリクソンのいう”傾聴”──、見えてきたのはまったく別の姿だった。
・相手の言葉を一語一語、丁寧に受け取る、忍耐強いまなざし
・軽率に踏み込まない、慎み深い距離感
・誠実さと繊細さに支えられた対話の構え
──それは、「話せない人」ではなかった。
むしろ、「相手を大切に扱いたいと願う人」だった。
言葉の奥にあるこの“新しい語り”に、彼女自身が気づいた瞬間、表情がふっとやわらいだ。
“自己暗示”が、ほぐれていく音がした。
エリクソン催眠とは、そうした“気づき”の瞬間を静かに導くものだ。
それは、「こうなりなさい」と命じるものではない。
むしろ、「すでにあなたの中にあるものが、あなたを癒す力になる」ことを信じ、待つ技術だ。
たとえば、こんな言葉がふと浮かんだとき、それは“自己啓発”ではなく、無意識からの“応答”かもしれない。
「もう少し、誰かと深くつながってみたい」
「失敗しても、また話してみようかな」
「誰かを信じてみたいという気持ちが、まだ残っている気がする」
それは、“前向きに生きる”ための飾り言葉ではない。
あなた自身の心が、あなたに向けて発する“救いのささやき”なのだ。
婚活は、ときに“自分という物語”を書き換えるプロセスだ。
どこかで貼ってしまった「私は愛されない」「うまくいかない人間だ」というラベルに、もう一つ、別の語りを添えること。
それが、出会いの風景そのものを変える。
エリクソンはそれを「無意識の創造力」と呼んだ。
その力を、あなたも持っている。
どんなに傷ついていても。
どれだけ自信がなくても。
“語りが変わるとき、人生もまた、力強くそっと動き出す”。
婚活とは、その小さな奇跡を信じる実践でもあるのだ。
(婚活メンター・ひろ)
婚活がつらい──もう頑張れない。そんな声に、私たちは何度も耳を傾けてきました。
けれど、人は誰でも“回復する力”を内側に持っています。
その力を引き出すには、少しの伴走と、優しい問いかけが必要です。
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