ヒロの婚活心理学
婚活で試される”頼る勇気”──成婚者には「受援力」があった!婚活心理学Vol.25
なぜ、婚活中であることを誰にも言えないのか?その沈黙こそが、あなたを孤独にし、婚活を苦しくしているとしたら?──。
本論考は、今注目の「受援力=人に頼る力」を切り口に、婚活と人間関係の深層を読み解いていく。
誰かに「応援して」と言える強さ、人に頼る勇気、「紹介して」と言える勇気は、実は結婚してからも大事な“愛される力”そのもの。
婚活とは、パートナーシップのスキルを磨く、人間力を育てる旅の出発点でもあるのだ。
婚活心理学Lesson序|「誰にも言えない婚活」──その沈黙があなたを孤独にする
「婚活してる」って言いづらい空気
「婚活してるって、なんか言いにくいんですよね」
カウンセリングで何度も耳にしてきたこの一言に、現代の婚活が抱える“見えない孤立”が凝縮されている。
「職場の同僚にも、学生時代の友人にも、家族や親にはなおさら言えない。」と告白する人は多い。
出会いを求めているのに、その願いすら口にできない。
──言うのはリスク?一体、なぜだろう?私たちはなぜ、人に頼るのが嫌いなのか?
「恥ずかしい?」
「うまくいっていないのがバレるのが怖い?」
「まだまだ、ひとりで大丈夫?」
「(そもそも)心に秘めた”個人的な”事柄を、話す習慣がない?」
こうした思いの背景には、もっと深い文化的な声なき声が沈んでいるように思える。
「人に頼るのは甘えだ」
「助けを求めるのはかっこ悪い」──そんな空気の中で、私たちは育ってきたのかもしれない。
でも、それも表層の声だ。
だが、その“頼れなさ”が、あなたを婚活の迷路にひとり閉じ込めてしまっているとしたらどうだろう?
はじめからうまく行かない、孤立という結果が見えている誤った選択だとしたら、どうだろう?
一方で、SNSには、幸せそうなカップルや結婚報告が並び、「自然な出会い」が理想として語られる。
でも、現実はそう単純ではない。
多くの人がマッチングアプリ、結婚相談所、友人の紹介など、さまざまな手段を使っている。
にもかかわらず、なぜか誰にも言えない。
「婚活中です」
「紹介してもらえると嬉しいです」──そんなシンプルな一言が、どうしても喉をつかえて出てこない。
つまり、何かが止めている。ブレーキになっているのだ。
その沈黙はじわじわと孤独を深め、婚活を“自分ひとりで抱え込む戦い”に変えていく。
「受援力」とは何か?
そして、ここで登場するのが、「受援力(じゅえんりょく)」という考え方だ。
受援力とは、人に頼る力、頼る勇気──ただそれだけのようで、実はとても奥深い力だ。
誰かに助けを求めること。悩みを言葉にすること。自分の願いを誰かに手渡すこと。
それは、決して“弱さ”の証ではない。
むしろ、関係性を築くために必要な「はじまりの力」なのだ。
恋人になる、夫婦になる──それは、心を開いて、自分を丸ごと誰かに見せることでもある。
期待も、不安も、恥ずかしさも含めて。
だから婚活中に「私は婚活しています」「いい人がいたら紹介して」と言える、誰かに頼る勇気は、そのまま未来のパートナーに向かって心を開く練習になる。
実は頼ることは、愛し愛される準備でもある。
そして、ここにもうひとつ加えたい視点がある。
受援力とは、「誰かに助けを求める力」であると同時に、「人と分かち合う力」でもある。
つまりは、パートナーシップの基礎となる、“自己開示”と“シェア”の力だ。
親密な関係は、話すこと、頼ること、共有することから始まる。
いざという時、この頼る勇気がなければ、大切な家族さえ守れない。
婚活とは、ただ相手を探す営みではない。
それは、自分の”人間力”を育て、誰かと本当につながるための“準備の時間”なのだ。
──いま、その課題を与えられたとしたら、あなたは誰に「婚活中なんです」と言えるだろうか?
その問いを胸に、ブレーキの正体と、乗り越えるスキルとを求めて、一緒に探究の旅を始めていこう。
婚活心理学Lesson1|なぜ婚活はこんなに孤独なのか?
恋愛偏差値の敗者?
「婚活って、なんでこんなにキツイんですかね……」
クライアントのつぶやきは、冬の北風のように冷たくて切ない。
恋愛には“語れる始まり”がある。
好きになった人がいて、告白して、付き合って、関係が動き出す。
そのプロセスを誰かに話すことができる。
だが、婚活には“物語の始まり”が存在しない。
なぜなら、「私は婚活しています」と口に出した時点で、ある種の“敗北宣言”のように受け取られてしまいかねないからだ。
いつの時からか、恋愛が“自然”な出会いの延長であることを美徳とする文化では、婚活は“人工的”で“不自然”な選択のように見える。
実際、”婚活しないと結婚できない自分”を、内心恥じている人は案外多い。
それだけではない。”結婚に逃げた”という、外野からの心ないヤジがある。
職場の出世レースに疲れた男性や、キャリアを目指したはずの女性が”家庭に入る”ことを見下す言葉だ。
この偏見が、婚活者を無言のうちに“語れない場所”へと追いやっていくケースもある。
心の中の小部屋に閉じこもる
誰にも言えない。
言えないから相談できない。
相談できないから孤立する。
孤立するから、悩みが肥大化する。
そして、気がつけば、“自分の中の小部屋”に引きこもり、誰ともつながれなくなっていく。
この孤独のスパイラルこそが、現代の婚活がもつ最大の罠である。
だが、その罠は、静かに婚活者たちを追い詰めていく。
誰かと話すたびに、「あの子、まだ結婚してないんだって」と陰で言われるような被害妄想に苛まれ、ますます殻に閉じこもってしまう。
そうして、誰にも「助けて」が言えない大人たちが量産されていく。
この構造は、”過労死”を生み出すシステムと似かよってはいないだろうか?
本来、婚活とは“人との関係をつくるための営み”であるはずなのに、そのプロセス自体が“人とのつながり”を絶つものになってしまっている。
この逆説の中に、私たちは閉じ込められているのだ。
では、この牢獄から抜け出す鍵は、どこにあるのか?
──次章では、その扉を開くキーワード、頼る勇気=「受援力」について掘り下げていこう。
婚活心理学Lesson2|「受援力」ってなんだろう?──Help-Seeking Self-Efficacyの視点から
援助要請の自己効力感とは?
では、前章で見た「孤独のスパイラル」から抜け出す鍵とは何か?
その核心にあるのが、「受援力(じゅえんりょく)」という、まだ広く知られていないが極めて重要なスキルだ。
簡単に言えば、「受援力」とは、人に助けを求める力、頼る勇気のこと。
もっと言えば、“誰かを頼ってもいい”という心の構え、さらには“頼れる自分である”という自己信頼を含んだ、最も基本的な生き方の態度でもある。
欧米圏の心理学では、これに近い概念を「Help-Seeking Self-Efficacy(援助要請の自己効力感)」と呼ぶ。
──この概念の詳細は、最終章の「補遺」を参照してほしい。
Help(援助)をSeeking(求める)ことに対して、自分が有効に行動できると思えているか。
つまり、この社会の中で、「自分には、助けを求める”権利”がある」と実感できているか。
単に「助けてと言えるかどうか」ではない。
それはもっと深く、「助けてと言ってもいい」と心から信じられるかどうか、という自己の存在そのものへの肯定感なのだ。
「頼っていい」と自分に許可を出せる人だけが、本当の意味で“つながり”の輪の中に入っていける。
受援力の高い人は、「困ったときは相談する」「誰かに任せても大丈夫」と感じることができる。
逆に受援力が低い人は、「人に迷惑をかけたくない」「悩みを知られたくない」「頼ったところでどうせ無理」と、心の中でブレーキをかけてしまう。
自分の人生に他者を招き入れる力
そして、頼る勇気を挫くそのブレーキこそが、婚活を孤独で息苦しいものに変えてしまう最大の原因なのだ。
なぜなら、婚活には“関係性の扉を自ら開く力”が不可欠だからだ。
パートナーシップとは、ふたりで築くもの。
でも、そのスタート地点である「誰かに頼る」「誰かに話す」ことができなければ、その共同作業の第一歩すら踏み出せない。
受援力は、単なるコミュニケーション・スキルではない。
それは、「自分の人生に他者を招き入れる力」であり、「関係性の未来を信じる力」勇気なのだ。
この力は、生まれつきのものではない。
練習すれば、誰でも育てていくことができる。
そして、婚活は──言い換えれば、人生のもっとも個人的な願いを人に明かし、支えてもらいながら前進していくプロセスは──受援力を鍛えるための最高の“実践の場”でもある。
婚活における受援力は、成功の鍵であると同時に、 「人に頼っても、自分は見捨てられない」という新しい人生の信念を育てる、希望の土壌でもあるのだ。
では、その力をどう育てるのか?
次章では、「なぜ頼るのがこんなに怖いのか?」という心理の深層に切り込んでいく。
婚活心理学Lesson3|“頼る”ことが、なぜこんなに怖いのか?
恥と恐れ/自立(自律)
あなたは、助けを求めるときに、胸の奥がざわつく感覚を覚えたことがあるだろうか?
──断られたらどうしよう。
──迷惑だと思われるかもしれない。
──情けない人間だと思われないだろうか?
そう、その正体は「恥」と「恐れ」だ。
戦後の日本社会は、「自立(自律)」を美徳として語りすぎてきた。
「人に迷惑をかけないように」
「自分のことは自分でやるのが当たり前」
──そんな教育を私たちは無意識のうちに刷り込まれてきた。
その結果、「誰かに頼る」という行為には、どこか後ろめたい罪悪感やら、“劣等感”や“負け犬”のニュアンスがまとわりついてしまう。
でも、冷静に考えてみてほしい。
私たちは、子どもの頃から誰かに助けられて生きてきた。
歩き方も、言葉も、ルールも、誰かに教わった。
人に頼らずに生きるなんて、幻想だ。
にもかかわらず、大人になるにつれ「助けて」が言えなくなる。
そのブレーキは、“成長”ではなく、“孤立”への滑走路だったのかもしれない。
婚活で“頼る”ことが怖いのは、単にプライドの問題ではない。
それは、自己価値と深く結びついた「存在の恐れ」だ。
──自分が人に頼ったとき、拒絶されるかもしれない。
──そのとき、自分の価値が根本から崩れるように感じる。
大人に何かを依頼する。
あるいは友達を遊びに誘う。
その時の、部分的な「ノー」や拒否が、まるで人格全体を否定されたように感じ、傷ついた体験──自分には価値がないと受け取った──が、誰にでもあるのではないだろうか。
心のサバイバー
またもっと強力なのは、自分が人に頼ることで、相手からも頼られたら嫌だな、と身構えてしまう。
その下には、自分のことで精一杯なので、人を助ける余力はないという思い込みがある。
だから私たちは、無意識に“頼らないことで自分を守ろう”とする。
だが、その「自衛」は、ときに自分自身を裏切る。
人に頼れない人は、誰ともつながれない。
誰ともつながれない人は、愛することも、愛されることもできない。
これは脅しではなく、心理学的な真理だ。
受援力とは、単に技術ではなく、「人に頼っても、自分は壊れない」と信じることができる心の強さ。
そしてその頼る勇気、強さは、挫けずに、誰かに小さく頼ることで、少しずつ育っていく。
──ちょっとだけ、助けてほしい。
──いい人いたら、紹介してくれる?
──実は、婚活始めたんだ。
そのオープンハートの一言が、未来を変えることがある。
たとえば、家族だけでなく、職場の同僚や、先輩・後輩、パートのおばさんかもしれない。
あなたが、何か”小さな秘密を抱えている”ことは、彼らはとっくに気づいている可能性がある。
だからこそ、恐れを越えて頼る力が、婚活のなかでどうしても必要になるのだ。
次章では、「“頼れる人”を見つけるための視点」へと進んでいこう。
婚活心理学Lesson4|“頼れる人”は、いますか?──あなたの関係資本を棚卸しする
なんでも頼める人はいるか?
「頼る勇気が大事だ」ということは分かった。
でも、そもそも“誰に”頼ればいいのか──ここで立ち止まってしまう人は少なくない。
孤立している人ほど、「相談できる人がいない」と感じやすい。
だが、それは本当に“いない”のだろうか?
実際には、「いない」のではなく「思い出していない」「思いつこうとしていない」ことがほとんどだ。
もっと言えば、「頼っていいという”許可”を、自分自身に出していない」だけかもしれない。
まずは静かに、あなたの人間関係を見渡してみてほしい。
家族、兄弟姉妹、親戚、学生時代の友人、職場の同僚、先輩、趣味の仲間、元恋人、恩師、古い友人──
その中に、“あなたの幸せを本気で願ってくれている人”は、本当にひとりもいないだろうか?
あるいは、最近は疎遠でも、ふと名前が浮かぶ誰か。
前の職場でよく話した“あの人”、長らく会っていないけどLINEは残っている“あの人”。
「この人なら、話しても大丈夫かも」と、直感的に思える存在。
それが、あなたにとっての“頼れる人”の入口だ。
「頼ってもいい」という許可が出せる人/出せない人
ここで大事なのは、その人が「完璧なアドバイザー」である必要はない、ということ。
話を聞いてくれるだけでもいい。
笑ってくれるだけでもいい。
「そうなんだ」と受け止めてくれるだけでも、それは“孤立”の壁に小さな風穴を開けてくれる。
もうひとつ、婚活者にとって特に重要な視点がある。
それは、「紹介してくれそうな人」だ。
婚活において、最もリアルに出会いの幅を広げてくれるのは、まさにこの“紹介を頼める人の存在”である。
しかもこれは、単に人脈の話ではない。
「この人に頼ってもいい」と思えること自体が、あなたの受援力の実践力を象徴している。
ひとつヒントを挙げるなら、できるだけ“利害関係のない人”を選ぶこと。
紹介された相手と何かあっても、その人との関係がこじれない──そういう余白がある相手が望ましい。
「いい人いたら紹介してくれる?」 たったその一言を言えるかどうか。
それは、自分の殻を破って社会とのつながりを取り戻す、小さな革命である。
逆に言えば、「自分ひとりでどうにかしなきゃ」と抱え込んでしまう人ほど、婚活が行き詰まるのは当然なのだ。
婚活とは、孤独な自己完結の物語ではない。
関係性のなかで再構築される、“人生という対話”の場である。
いま一度、自分の周囲を静かに見つめ直してみよう。
あなたが今、頼ってみたいと感じる相手は誰だろう?
そしてその人に、どんな言葉で思いを伝えたいだろうか?
次章では、実際にどうやって「婚活中」と伝え、開かれた関係性を築くか──「自己開示の技術」について考えていく。
婚活心理学Lesson5|自己開示が怖いあなたへ──「私は婚活中です」と言える力
自己開示(オープンハート)
人に頼るには、まず「自分の今」を伝える必要がある。
つまり、“自己開示”だ。
だが、この「自己開示」こそ、多くの婚活者がつまずく壁でもある。
なぜなら、そこには二重の恐れがあり、頼る勇気がいるからだ。
ひとつは、「他人の評価」への恐れ。
「まだ結婚してなかったの?」
「そんなに焦ってるの?」
──そんなふうに思われるんじゃないか、という想像の刃が、心に突き刺さる。
もうひとつは、「自分の現状を引き受けること」への恐れ。
「婚活中」と口に出した瞬間、自分の孤独や焦りや不安が輪郭を持って浮かび上がる。
(嫌な喩えだが、自分が「がん(キャンサー)」だと想像すると、切実にわかるだろう)
その現実を受け入れるのが、何よりも怖い。
だから人は黙る。笑ってごまかす。話題を逸らす。
──けれど、沈黙は何も解決しない。
それどころか、沈黙を続けるほどに、自己肯定感はじわじわと削れていき、自分自身に対する信頼すら蝕まれてしまう。
自己開示は心のリハビリ
だからこそ、あえて言葉にする勇気を持ってみてほしい。
「実は、婚活を始めたんだ」
「そろそろ本気で結婚を考えていて」
「もし良い人がいたら、紹介してもらえたらうれしいな」
──たったそれだけの一言、頼る勇気が、誰かとの関係性を変え、あなた自身をも変えていくことがある。
自己開示とは、恥ではないし、弱さをさらけ出すことではない。
それは、「私は大人の関係性を育みたい」と世界に向けて宣言する、強さの形なのだ。
婚活は、一人の理想の相手を見つける旅ではない。
他者との関係性のなかで、“自分を開いていく勇気”を育てていくプロセスでもある。
だからこそ、自己開示は婚活における“心のリハビリ”だ。
それは、未来のパートナーに向けて、自分という器をあらためて整えなおす準備行為なのだ。
結婚後、あらゆる局面で問われるのは、まさにこの心を打ち明ける「開く力」だ。
うまくいかないとき、寂しさを感じたとき、不安や疑問が生まれたとき──言葉にして、共有すること。
それができる人だけが、真の幸福なパートナーシップを築いていける。
婚活中に「私は婚活中です」と言えるということ。
それは単なるデータの共有ではない。
それは、あなたが“愛に対して本気だ”という、大人としての心の表明である。
次章では、受援力を“行動”として発揮したときに起きる変化──「誰かに頼る勇気」が婚活にもたらす実際のエピソードに焦点を当てていこう。
婚活心理学Lesson6|“誰かに頼った婚活”は、なぜうまくいくのか?
頼ると婚活は変わる?
ここまで読んで、「でも、本当に誰かに頼ることで、婚活って変わるの?」
──そう思われた人もいるかもしれない。
答えは、はっきりしている。
──変わる。確実に、変わるのだ。
実際、私たちのカウンセリングの現場では、「誰かに話したことが転機になった」「紹介を頼んでみたら、流れが一気に変わった」と語る人が後を絶たない。
たとえば、
「職場の先輩に思い切って“誰か紹介してもらえませんか”と聞いてみたんです。そしたら、まさかの、今の夫につながったんですよ」
「友達に“婚活でちょっと疲れてる”って打ち明けたら、週末に一緒に話を聞いてくれて。それだけで救われて、また頑張ろうって思えたんです」
「しばらく会えていなかった既婚者の従姉妹に、「婚活の相談があって」と打ち明けたら、とっても喜んでくれて。大学の同期でゼミ仲間だという男性を紹介されて、それが縁で夫と結ばれました。」
──たった一言。たった一歩の「頼る」が、目の前の風景を変えてしまうことがある。
なぜ、これほどまでに「頼ること」は力を持つのか?
ひとことで言えば、人とのつながりには、私たちの“心理的回復力(レジリエンス)”を呼び起こす力があるからだ。
他者に話すことで、ぐちゃぐちゃになっていた感情が整理される。
共感されることで、「私だけじゃない」「皆、大変だったんだ」と感じられる。
助けを差し伸べられることで、「私は誰かにとって大切な存在なんだ」と実感できる。
この感覚が、自尊心の骨格を強化し、足元を安定させる。
頼ることは与えること
婚活は、感情の波が激しい“心の長距離マラソン”だ。
誰かの支えがあるかどうかで、完走率はまったく違ってくる。
しかも、頼られた相手も変わる。ここが大事だ。
頼ってくれたことで、「自分は信頼されている」と感じる。
すると、その人の中にも“与える力”が目覚める。
この瞬間、信頼と好意の循環が始まる。
誰かを頼ることは”奪う”ことでも、”借りをつくる”ことでもない。
むしろ、”与える”ことなのだから。
関係性とは、ひとりでは始められない。
誰かに心を開き、依存ではなく“相互依存”というバランスのなかで関係を築くこと。
それが、成熟したパートナーシップの本質なのだ。
だからこそ、「誰かに頼った婚活」は強い。
孤独な自己完結型の婚活では得られない、関係性の実感と人間的なあたたかさがそこにはある。
これは運や偶然ではない。
それは、あなたが“開いた”ことによって生まれた、関係性の力学である。
次章では、その受援力=頼る勇気の最も本質的な姿──「愛するとは、頼れることである」という核心に触れていこう。
婚活心理学Lesson7|「誰かに頼る」という愛のはじまり
誰かに頼る=愛のレッスン
パートナーシップとは、たったひとりの誰かと、二度とない人生の時間を“ともに引き受ける”愛の営みだ。
だとしたら──「人に頼る」ということは、愛の種を蒔くことに他ならない。
婚活は、「理想の相手を見つける旅」ではない。
むしろ、「誰かと関係を築ける自分へと育っていく旅」だ。
その旅の中で、あなたが本当に育てるべきものは、プロフィールの完成度や話し上手なスキルではない。
──頼る力。
──受け取る器。
──“ありがとう”を誠実に言える心の柔らかさ。
それこそが、パートナーシップにおける最も本質的な土台であり、 他者と共に生きるという営みの出発点なのだ。
私たちは、「与えること」ばかりが愛の証だと思い込んでいる。
そして、「与えるものがない自分には価値がない」と、無意識に自分を責めてしまう。
でも、真実はこうだ。
「受け取ること」──つまり、誰かの好意や支えをまっすぐに受け入れることこそ、愛の成熟の証なのである。
「助けて」が言える人だけが、「ありがとう」も言える。
「頼っていい」と信じられる人だけが、「支え合える関係」を育てていける。
ここにおいて、「受援力」は単なるスキルや性格傾向ではない。
それは、愛されることを自分に許すための“存在の姿勢”なのだ。
そしてこの力は、必ず「愛する力」と呼応する。
愛は、ただ与えるだけでも、ただ受け取るだけでも成り立たない。
呼びかけと応答、依存と自立、支えることと支えられること──その響き合いの中にしか、本物の関係性は生まれない。
人間力を養う
婚活という場で、あなたが誰かに心を開き、頼り、受け取り、感謝を交わす──その小さな一歩一歩が、未来のパートナーとの関係性を先取りする“エクササイズ(予行演習)”になっていく。
さらに言えば、こうした受援力は、単に愛を育む力にとどまらない。
それは、人間としての「魅力」そのものと深く結びついている。
私たちが「人間的に魅力のある人」と感じる人物──気遣いができる人、素直な人、誰にでも分け隔てなく礼儀がある人、ユーモアを忘れない人──そうした人たちには共通して、「助けを受け取る器」もまた育っている。
自分の弱さを隠さずに伝えられる人は、他人の弱さも受け入れられる。
人に頼れる人は、人からも頼られる。
つまり、受援力とは“人間力”でもあるのだ。
そして婚活は、その人間力を磨き始めるための、もっとも現実的で切実な舞台でもある。
愛されたいなら、まず“人として魅力的に振る舞うこと”──それは、外見を磨くよりも、もっと根本的な関係性の力を問う問いだ。
その意味で、「頼る勇気」は、「愛する覚悟」であると同時に、「人として成熟していく旅」の第一歩でもあるのだ。
──あなたの受援力が、頼る勇気が、感謝が、愛の扉をひらく。
その扉の向こうには、もうひとりではない“わたしたち”の時間が待っている。
そして、ふたりで育てていく至福な関係性が、今日この瞬間から、静かに始まっていくのだ。
補遺|Help-Seeking Self-Efficacyと“受援力”の深層心理
バンデューラと自己効力感
この論考で扱ってきた「受援力」は、“人に頼る力”を指すが、その奥には心理学的に非常に興味深い構造がある。
近年の心理学、とくに社会的認知理論のアルバート・バンデューラの「自己効力感理論」に基づく拡張概念として、「Help-Seeking Self-Efficacy(援助要請の自己効力感)」というものがある。
これは、自分が「助けを求める行動」をとったときに、状況が改善する/拒絶されない/意味のある結果を得られる、と信じられる感覚を指す。
この自己効力感が低いと、人は困っていても誰かに助けを求めることができず、自分だけで問題を抱え込みがちになる。
それが孤立を生み、心の疲弊を進行させてしまう。
私は愛されるに値する(自己愛)
ここで重要なのは、「自分には助けを求める資格がある」と信じられるかどうかだ。
この「資格」とは、社会的な制度上の権利ではなく、心理的な“自己許可”──すなわち、「私は助けられていい存在だ」と思えているかどうか。
この自己許可が欠如していると、いくら周囲に優しい人がいても、本人は誰にも頼れないまま、自己完結の迷路に閉じ込められてしまう。
つまり、受援力とは、単なるスキルではなく、「自分は関係性に入っていい」「私は頼られても拒絶されない存在だ」という深い信念の土壌から育まれる心の態度なのだ。
婚活においてこの信念を取り戻すことは、恋愛以前の課題であり、人生全体にわたる関係性の“リカバリー”に等しい。
だからこそ、受援力の回復とは、単なる婚活テクニックではなく、「愛されていい私」を再認する、深くて優しい人間の再出発となるのだ。
(婚活メンター・ひろ)
婚活って、ほんとに一人じゃしんどいですよね。
誰にも言えなくて、ぐるぐる考え込んで、気づけばまた孤独のなかにいる──そんな日々、ありませんか?
でも、ひとりで抱え込まなくて大丈夫。
私たちは、あなたの話をきくプロであり、結果が出るまで伴走します。
まずは、力を抜いて話してみませんか。
ちょっと”頼ってみる”ことから始まる関係もありますよ。
一緒に”頼る勇気”を養っていきましょう!
▶︎ 詳しくはこちらから(オンラインで全国どこからでもOK)