ヒロの婚活心理学
あなたの婚活疲れには“理由があった”──健康心理学でひもとくストレスと希望の再起動 婚活心理学Vol.21
はじめに
婚活中、何度も「疲れた」と感じたことはありませんか?
「またダメだった」「誰にも選ばれない」「私に合ういい人はいない」
そんな失望と自己否定のループに、気づけばストレスで心が折れそうになっている──。
それがいわゆる「婚活疲れ(婚活疲労)」です。
けれど、声を大にして言いたいのです。
婚活疲れは、あなたがダメだから起こるのではない。
これは、あなたが「真剣に向き合っている証」なのです。
本論考では、スタンフォード大学の健康心理学者ケリー・マクゴニガルの「サイエンス・ヘルプ」の視点を導入しながら、婚活疲れの正体、ストレスとの新しい向き合い方、そして成婚に向かうための再起動の方法をひもといていきます。
なぜマクゴニガルなのか──それは、彼女が「ストレスを消そうとするのではなく、正しく扱うことこそが人を強くする」と提唱する、現代におけるレジリエンス(回復力)の思想を、科学と心理学の両側面から具体的に提示しているからです。
婚活という不確実性と評価不安の渦中にある現代人にとって、マクゴニガルのアプローチは、“疲れ”を敵視せずに生かすための、最も信頼できる灯台のひとつなのです。
婚活心理学Lesson1|婚活疲れの正体──なぜこんなにストレスを感じるのか?
婚活における疲れとは、単なる体力の消耗ではありません。
それは、「評価されること」への緊張、「断られるかもしれない」不安、「どうすれば相思相愛になれるか」を考え続ける精神的疲弊の蓄積なのです。
婚活という活動は、常に“自分”が婚活市場の一商品として査定されているような場に身を置くことを意味します。
アプリでのやりとり、プロフィール選定、お見合いの場でのふるまい、次につながる交際へのプレッシャー──それら全てが、比較と競争の連続です。
これは、脳にとって強烈なストレスを生む状況です。
婚活疲れチェックリスト──あなたの心はサインを出している
以下にあげる項目のうち、3つ以上当てはまる方は、婚活疲れの入口に差しかかっている可能性があります:
- ①お見合いやデートの前に気が重くなる
- ②婚活アプリを開くのが億劫
- ③断られるのが怖くて、積極的に申し込めない
- ④誰にも本音を話せていないと感じる
- ⑤「なんでうまくいかないんだろう」と寝る前に考えてしまう
- ⑥相手のプロフィールはもう見たくない
- ⑦「もう誰とも会いたくない」と思ったことがある
- ⑧婚活中に自分が他人のように感じる瞬間がある
- ⑨好意をもたれること自体にプレッシャーを感じる
- ⑩「またゼロから関係を築くのか」と思うと途方に暮れる
これは、脳と心が「そろそろ立ち止まって、自分をいたわって」と静かに呼びかけているサインです。
疲れは、あなたが“真剣に向き合ってきた証”として現れている自然な反応です。
婚活心理学Lesson2|ストレスは敵じゃない──婚活ストレスの健康心理学的な乗り超え方
ケリー・マクゴニガルが唱える「ストレス観の再定義」は、婚活にも深く通じます。
彼女の研究によれば、「ストレスが悪い」のではなく、「ストレスを悪いと思うこと」が身体と心に悪影響を及ぼすのです。
実際、ストレスを“挑戦”や“意味ある行動”のサインとして捉える人々のほうが、パフォーマンスも高く、回復力(レジリエンス)にも優れているという科学的知見が示されています。
つまり、「婚活で疲れる自分はダメだ」「またストレスを感じてしまった」と、自分を責めることこそが、さらなる疲弊の引き金になっているのです。
疲れそのものよりも、その疲れに貼られた「否定的なラベル」が、あなたを蝕んでいくのです。
マクゴニガルはこう語ります:
“ストレスは、あなたが何かに真剣だからこそ生まれるエネルギー。”
そもそも大半の方が婚活を始める前から、職場でストレスを抱えていた可能性が高い。
理由は様々ですが、「このままではいけない」「生活を変えなきゃ」と思い立って婚活に飛び込んでくる。
人生と真剣に向き合っているからこそ、不安、期待、焦り、安堵──さまざまな感情が動くのです。
それらの感情は、ストレスという形で身体に表れることもありますが、それ自体が「生きている証拠」であり、「心がまだ希望を諦めていない」ことの現れでもあります。
ストレスを味方にするとは、自分の努力と感情に意味を与え直すこと。
「これは無駄じゃない」「この経験も、自分を強くしてくれる」──そう思えるとき、ストレスはあなたを壊すものではなく、前に進ませる燃料になるのです。
マクゴニガルの強みは、こうした再定義を“感情論”や“精神論”ではなく、科学とデータの裏づけによって語るところにあります。
彼女の理論は、「婚活疲れ」という、他人には理解されづらい心の葛藤に苦しむ人々に対して、「あなたの状態には科学的な意味がある」という安心と説明を与えてくれるのです。
人は、自分のつらさが「正体不明」なとき、最も不安になります。
だからこそ、それが脳や神経、心理のメカニズムとして説明されることによって、「これはおかしいことではない」「きちんと訂正可能な反応なんだ」と腑に落ち、自分に対する信頼を回復するきっかけになるのです。
婚活心理学Lesson3|婚活疲れを癒すのは“孤独の解消”──「癒し」ではなく「つながり」だった
婚活現場で発見したことは、疲れているとき、人は「癒し」を求めます。
でも婚活疲れの場合、本当に必要なのは“癒し”より“つながり”かもしれません。
婚活疲れが長引く人に共通するのは、「誰にも本音が言えない」「わかってもらえない」という孤立感です。
プロフィールを整え、言葉を選び、好かれるふるまいを演じ続ける中で、本当の自分はどこかに置き去りにされてしまう。
そのとき心は「もう誰にも会いたくない」とさえ感じ始めます。
ケリー・マクゴニガルの研究でも、ストレスによって分泌されるホルモン“オキシトシン”には、「人とつながろうとする力」が備わっているとされています。
これは“絆ホルモン”とも呼ばれ、親密さや信頼感を高める働きがあることが知られています。
実際、マクゴニガルのTEDトーク「ストレスと友達になる方法」でも紹介されたように、ストレス反応の中には“他者との絆を求める”行動を促進する生理的仕組みが含まれており、オキシトシンがその中心的役割を果たしていると科学的に示されています。
つまり、ストレスは本来、私たちをバラバラにするものではなく、むしろ他者と“助け合いたい”“つながりたい”という衝動を促す、生理的なサインなのです。
この視点に立てば、「婚活疲れ」も孤独を深める現象ではなく、共感を求める自然な反応として捉え直すことができます。
それにもかかわらず、婚活の場では「弱音を吐いてはいけない」「自分をポジティブに見せなければならない」という空気が漂っています。
男女を問わず、このような環境では、他者からの評価に自分を過剰に適応させてしまいがちで、本来の自分の感情や欲求が抑圧されてしまいます。
その結果、つながるどころか、むしろ“誰とも本音で関われない”という深い孤独感を生むのです。
人は「痛み」を共有できたとき、驚くほどの回復力を発揮します。
「うまくいかない自分」を受け入れてくれる誰かの存在──それが、婚活疲れの最良の薬になります。
感情を言語化し、信頼できる人と共有すること。 それは脳にとって、最も安全な“リセット”スイッチなのです。
そしてなにより大切なのは、「共感は贈り物である」ということ。
相手に話すことは、恥でも重荷でもなく、「私はまだ誰かとつながりたいと思っている」という“希望の表現”なのです。
婚活心理学Lesson4|婚活疲れを癒す!科学がすすめるセルフケアと回復メソッド
第3章で見てきたように、婚活疲れの本質には、孤独や過剰適応による内面の摩耗があります。
その結果として、心と身体のエネルギーが枯渇し、自分自身をケアする余裕さえも失われていきます。
だからこそ、単なる“気分転換”ではなく、神経系と自己感情の回復を促す具体的な方法が必要です。
婚活疲れからの回復には、次の4つの「科学的ケア」が役立ちます。
✅ 1|マインドフルネス呼吸法:10分で自律神経が整う
目を閉じて、5秒吸って、5秒吐く。このシンプルな呼吸に、心と身体は反応します。
1日10分の“意識的な呼吸”が、ストレスによって過敏になった神経系を穏やかに整えてくれるのです。
特に婚活のような評価不安や社会的プレッシャーにさらされる環境では、呼吸を通じて交感神経と副交感神経のバランスを取り戻すことが、心の回復において極めて重要です。
呼吸を整えることは、感情を整えることでもあるのです。
✅ 2|ストレス・ジャーナリング:書いて感情を取り戻す
「何がつらいのか」「どうなってほしいのか」を紙に書き出すだけで、脳内のカオスが整理され、落ち着きを取り戻します。
書くという行為は、感情にラベルを与える作業でもあり、混乱していた思考を視覚化・言語化することで、自己理解と感情のコントロール力を高める効果があります。
特に婚活のように外的評価が多い環境では、内なる声を拾い直すこの行為が、心の自律を支える大切な手段になります。
✅ 3|セルフ・コンパッション:自分にかける“ひとこと”を変える
「なんでこんなにダメなんだろう」ではなく、「今日もよく頑張ってるね」と自分に語りかける。
ケリーの提唱する“セルフ・コンパッション”は、自己否定ループからの脱出口になります。
実際、セルフ・コンパッションが高い人は、そうでない人に比べてストレス耐性があり、抑うつ・不安・自己批判が低く、ウェルビーイング(心理的健康感)やレジリエンスが高いことが多くの研究で確認されています。
このような科学的エビデンスは、単なる“自己肯定”とは異なるセルフ・コンパッションの力を裏づけています。
✅ 4|オープン・ハート戦略:頼ることは、負けじゃない
誰かの助けを借りることに、罪悪感を持つ必要はありません。婚活サポートやカウンセリングを受けることは、「手を伸ばせる力」──成熟した自立の一形態なのです。
実際、心理学的研究では、適切なサポートの活用がストレス耐性や問題解決能力を高め、孤立感や無力感の軽減につながることが知られています。
婚活という長期戦を乗り超えるうえで、頼れる人がいること自体が、心のレジリエンスを高める大きな資源になるのです。
助けを借りることはもちろんですが、ストレスを抱えて落ち込んでいる時ほど、誰かを助ける。
貢献意識で声を掛けたり、繋がってみると気持ちが浮上したという会員からの報告もある。
婚活疲れから回復した人の声──健康心理学的実践がもたらす変化
「“ストレスを感じていい”という考え方に救われました。ジャーナリングを始めたことで、前のパートナーに先立たれた負の感情が整理されて、会う人会う人に優しくなれ、自分に自信が持てた気がします。」(→その後、波長の合う同じ境遇の方と再婚)
──Kさん(46歳女性)
「婚活サポートを受けるのは“負け犬”だと思っていた。でもある時から、オープンハート(私の場合は自己開示と、本音トークが苦手でした)を意識して話してみたら、すごく楽になって、3ヶ月後には真剣交際に。」(その後、歳上女性から望まれて成婚)
──Hさん(39歳男性)
「マインドフルネスやセルフ・コンパッションの実践で、自己肯定感が上がり、完璧な自分じゃなくても“選ばれる価値がある”と思えるようになりました。婚活って、他人からの承認を求めるものだと思っていたけど、自分をいたわることで逆に人との関係が楽になって、交際が長続きするようになりました。」(→彼女の成婚は劇的でした。歳上男性の父親の末期の病床で、結婚を報告させ、彼の家族から感謝される)
──Yさん(33歳女性)
婚活心理学Lesson5|婚活で「誰も好きになれない」と悩むあなたへ
婚活疲れが蓄積すると、「ときめかない」「好きになれない」「誰ともうまくいかない」状態に陥ることがあります。
これは、「もう傷つきたくない」という心のブレーキであり、正常な防衛反応でもあります。
心理学ではこのような状態を「情動麻痺(emotional numbing)」と呼び、トラウマや慢性的ストレスの中で感情の起伏を抑えようとする自己防衛のひとつとして知られています。
婚活においても、断られる体験や希望が裏切られる経験が積み重なると、心は「感じること」そのものを抑制し始めます。
これは感受性の欠如ではなく、むしろ“心の回路が過負荷状態になっている”というサインです。
この状態では、「本当に好きかどうか」や「ときめきがあるか」という感情の基準だけで関係性を判断することが難しくなります。
その結果、「誰かを好きになれるのだろうか」という感覚に陥るのです。
ここで大切なのは、自分を責めないことです。
「湧かない感情」を否定せず、「今は休めというサインかもしれない」と受け止める視点が必要です。
トラウマ研究の世界的権威、ベッセル・ヴァン・デア・コークは、その代表的著書『身体はトラウマを記録する」において、トラウマが脳と身体に与える影響とその回復メカニズムが、神経科学と臨床実践の観点から詳述されています。
焦って“ときめく相手”を探すよりも、まずは“安心できる相手”と静かな関係を育てること。
信頼と尊重の土壌が整ってくると、感情は自然に呼吸を取り戻し、心は再び人を感じ取る力を思い出すのです。
だからこそ、婚活における“感情の鈍さ”もまた、一つの回復過程のサイン。無理に感情を作り出そうとせず、今の自分の状態を理解し、それに優しく寄り添うことが、次の出会いの準備につながるのです。
婚活心理学Lesson結び|婚活疲れの先にある“再起動”──それでも、また誰かと笑い合いたいから
婚活疲れとは、人生に本気で向き合った人にしか訪れない現象です。
あなたが何度も疲れてきたのは、何度も希望を持ち直してきた証であり、「人生を共にできる人と出会いたい」という気持ちをあきらめてこなかった証拠です。
本論考で紹介してきたように、婚活疲れは心理学的にも生理的にも、十分に説明可能な“自然な反応”です。
ストレスが悪なのではなく、ストレスの扱い方が重要だというマクゴニガルの科学的提案。感情の鈍化や無力感も、心が自己を守ろうとする正常な反応であるというトラウマ心理学の知見。
どれもが、あなたの体験に科学的(合理的)な意味と希望の文脈を与えてくれます。
そして、その再起動のためには、「一人で立ち直る」ことではなく、「誰かと、安心できる関係の中で回復していく」ことが何よりも大切なのです。
孤立ではなく、共感と共有こそが回復の鍵であり、心の回路を再び“感じられる状態”へとつなぎ直すのです。
婚活疲れやストレスからの回復には、心理的安全性や共感的なつながりが不可欠です。
このテーマでは、心理学者ジュリアンヌ・ホルト=ランスタッドによる有名な研究があります(Holt-Lunstad et al., 2010)。
この研究は、148の研究と約30万人のデータを統合したメタアナリシスであり、社会的つながりが死亡リスクを有意に低下させることを示しています。
その影響は、喫煙や肥満といった健康リスク要因と同程度、あるいはそれ以上であると報告されており、人間にとって「つながり」がいかに生命的な要因であるかを裏づけています。
この研究は、「つながること」そのものが健康・回復・幸福感に直結するという科学的根拠を与えており、「パートナーシップを築くことが単なる恋愛ではなく、健康と命を支える社会的基盤である」ことを証明しています。
婚活というプロセスの中で、そうした「支え合える関係性」を築くことこそが、最終的なゴールである“パートナーシップ”の始まりなのかもしれません。
最後に──
ケリー・マクゴニガルの言葉に学ぶ、婚活とストレスの再定義
“ストレスは、あなたが何かに真剣だからこそ生まれるエネルギー。”
――ケリー・マクゴニガル『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』
あなたの疲れは、あなたが真剣である証拠。
ならば、あなたはきっと、誠実に人を愛することのできる人です。
婚活疲れとは、人生に本気で向き合った人にしか訪れない現象です。
あなたが何度も疲れてきたのは、何度も希望を持ち直してきた証。
「もういいかな」と思うその手前に、きっと本当の出会いが待っています。
心のエネルギーを奪うストレスを、ケアと知性と対話で「再起動」のエネルギーに変えていきましょう。
TED:ケリー・マクゴニガル: ストレスと友達になる方法
(翻訳あり)
婚活心理学Lesson補遺:
Ⅰ.ストレス・ジャーナリングとは何か?
「ジャーナリング(journaling)」は名詞「journal(日記・記録)」の動詞化された形で、心理学的文脈では「感情や思考を継続的に書き出すことによって、自己洞察や情動調整を促す手法」として使われます。
したがって、「ストレス・ジャーナリング」の直訳として自然な表現は:
- ストレスに関する感情記録
- ストレス経験の自己観察日記
- ストレス日誌
なども適しています。「ストレス・ジャーナリング(stress journaling)」の“ジャーナリング”は直訳すれば「日記を書くこと」ですが、心理学では「思考や感情を意図的に言語化して記録する行為」として使われます。これは単なる記録ではなく、感情と行動のパターンを整理し、自己理解を深める自己観察の実践法として近年注目されています。
この手法は、ジュリア・キャメロンの著書『ずっとやりたかったことを、やりなさい。(The Artist's Way)』で紹介されている「モーニング・ページ」とも通じています。
彼女は、毎朝A4のノート3ページに浮かんだ思考を一切制限せず書き続けることで、内面に滞留した思考や感情、自己否定を浄化し、創造性と回復力を取り戻すと説きました(日本製のB4やA5でも良く、ノート1ページでも効果があるとする声がネットにある)。
婚活疲れにおいても同様に、「書く」ことで思考の渦を外に出し、感情の絡まりをほどき、自分の“本音”に出会うプロセスは、再起動の一歩となるのです。
Ⅱ.セルフ・コンパッションとは何か?
“セルフ・コンパッション”とは、自分自身に対する思いやりのことです。
心理学者クリスティン・ネフによって提唱されたこの概念は、以下の3つの要素から成り立ちます:
- 自己への優しさ(Self-Kindness):失敗や困難に直面したときに、自分を批判せず、優しく接する態度。
- 共通の人間性(Common Humanity):苦しみは誰にでも起こるという認識。孤立せず、自分だけが特別にダメなのではないと理解すること。
- マインドフルネス(Mindfulness):自分の感情や痛みに気づき、それを抑え込まず、冷静に見つめる姿勢。
セルフ・コンパッションは、婚活のような“自己評価が常に問われる場”で特に有効です。
「またダメだった」「こんな自分じゃ無理だ」といった自己否定のループから抜け出すには、まず自分を否定せず、今の自分をそのまま受け入れる“内なる味方”の存在が必要です。
科学的研究でも、セルフ・コンパッションが高い人ほどストレス耐性が強く、幸福感が高く、うつや不安になりにくいことが示されています。
婚活でつまずいたときに「自分に優しくすること」は、決して逃げではなく、立ち直りのための戦略なのです。
Ⅲ.ベッセル・ヴァン・デア・コークとは誰か?──トラウマ回復と感情麻痺への理解の鍵
ベッセル・ヴァン・デア・コーク(Bessel van der Kolk)は、米国の精神科医であり、トラウマ研究の世界的第一人者です。
彼の代表作『The Body Keeps the Score』(2014)は、心的外傷が脳と身体にどのように記録され、影響し続けるかを神経科学・心理学・臨床実践の観点から明らかにした名著です。
この著書では、トラウマを単なる記憶や感情の問題ではなく、“身体に刻み込まれた経験”としてとらえる視点が提示されています。
特に「情動麻痺(emotional numbing)」の状態について、慢性的ストレスや未処理の感情がどのように人間の神経系に影響を及ぼし、感情反応を鈍麻させていくのかを実証的に論じています。
ヴァン・デア・コークは、感情を回復させるには「安全な環境」「共感的な関係性」「身体感覚を取り戻すこと」の3つが不可欠であると述べており、これは婚活における“誰を好きになれない”という感情の回復にも深く通じる洞察です。
『The Body Keeps the Score』は、PTSDだけでなく、日常的なストレスによる心身の不調を見つめ直すための大きなヒントを与えてくれる一冊であり、本稿の主張を裏付ける重要な理論的土台のひとつとなっています。
Ⅳ.ジュリアンヌ・ホルト=ランスタッドの研究とは?──「つながり」が命を守る科学的根拠
ジュリアンヌ・ホルト=ランスタッド(Julianne Holt-Lunstad)は、社会的つながりと健康の関係を研究する心理学者であり、2010年に発表した画期的なメタアナリシス論文で広く知られるようになりました。
この研究(Holt-Lunstad et al., 2010)では、世界中の148件、約30万人を対象とする大規模なデータを統合し、社会的なつながりの有無が死亡リスクに及ぼす影響を分析しました。
その結果、強い社会的つながりを持つ人は、孤立している人に比べて、平均で50%近く死亡リスクが低下するという結果が出ています。
これは、喫煙・肥満・運動不足といった従来の健康リスクと同等か、それ以上に重大な要因であることを示しており、「つながり」は単なる心理的慰めではなく、命を左右する“生物学的資源”であることを裏づけています。
婚活や人間関係において、つながりを築くことがいかに私たちの心身の健康にとって重要であるかを、この研究は雄弁に物語っています。
婚活疲れからの回復を考える上でも、「つながれる環境を持つこと」こそが、最大のセルフケアなのです。
(婚活メンター・ひろ)
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